鈴木輝一郎語録 その2

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鈴木「下準備を徹底的にしなければいけない」
 下準備については加藤秀俊『自己表現』(中公新書)にこうある。
《作家の多くは、小説を書くにあたって、しばしば、きわめて大がかりで精密な取材をおこなう。わたしはかつて、小説というものは、要するに絵空事であり、思いつくまま勝手に書くものなのだろう、と思っていたが、じっさいに作家の取材のありさまを見たりきいたりして、そういうふうに思い込んでいたわが身を恥じた。ひとつの土地、ひとつの家、そして一匹の虫にいたるまで、作者はメモを残す。具体的に存在しているもののスケッチが、やがて小説というものをつくってゆくための素材になるのだ。ただぽかんとすわっていると、いわゆる霊感なるものがおとずれ、そこからすらすらと「見てきたようなウソ」ができあがってゆくのだ、などと考えるのは大まちがいなのである。》

鈴木「本をたくさん読むこと、古典文学を読むこと」
 日垣隆『情報の「目利き」になる!』(ちくま新書
《プロでも「1ケ月100冊」というのがトップ集団であることがわかってきました。で、私も35歳から、それを自分に課しました。マラソンをやったことのある方はよくご存じのように、わずかなスピード差が、あっという間に大きな差になって広がってゆくものなのです。ですから、まがりなりにもトップに追いつくためには、この分野では「1週間に30冊以上」をやりきれば大丈夫だろうと思い(何が大丈夫なのかはよく考えませんでした)、そのペースを落とさずに現在に至っています。追いつける可能性だけは手放したくなかったので。》
 トップランナーである日垣さんですらこう言っている。素人が開眼しようと思うならこの程度の努力は最低でもしなければならない。

 鈴木さん、優しい言葉で厳しく受講生を叱咤しておられたのだ。そのことを理解できるかどうかはこちら側の感受性にある。先生からのメッセージをきちんと受け止めきっちりと努力したものだけが、金屏風の前で鈴木さんとの再会が果たせるだろう。
 自身のクオリティを高める時間は少ない。詰まらないことに時間を浪費している暇など凡人には許されないのだ。