今朝の朝日新聞『声』にフリーの編集者の方が『寅さんの脇役 立春の日逝く』という投稿で女優谷よしのさんの訃報を伝えていた。
この人、脇役中の脇役だった。『男はつらいよ』でもレギュラーに準ずるほどの出演回数を誇っているのだが、シナリオの配役欄でも名前を見つけることができない。本当にチョイ役で『男はつらいよ』に出演されていた。
例えばこんなシーンである。
オープニングの夢のシーンで、
死んだ竜造(おいちゃん)の身体に抱きすがって男泣きに泣く寅次郎。
さくら、その肩に手をかけ、慰めるように囁く。
さくら「お兄ちゃん……泣かないで……ね、お兄ちゃん・・・・・・お客さん・・・・・・」
女の声「お客さん……そんな格好で寝ていると風邪ひくよ」
女中が寅の肩をゆすっている。
二つ折りにした座布団を抱きしめて涙を流しているステテコ姿の寅、ハッと目をさます。
この女中が、谷さんだ。その他にも谷さんは『男はつらいよ』で全国あちこちで女中をやり続けている。だから映画を観ながら「あ、今回はこの旅館に勤めているんだ」と思うのが、実はとても楽しい。昔、流行った『ウォーリーを探せ』みたいでわくわくしたものだ。
また、昭和がひとつ消えた。ご冥福を祈る。