ストレスな奴ら その1

 部下がミスをした。普段から上客を装っているクライアントからのクレームだった。ワシャ(係長)を飛び越し、課長を飛び越し、直接、部長に電話が入った。どうやらワシャ部下が今手がけているそのクライアントがらみのイベントの段取りについての苦情らしい。部長は平身低頭して受話器を置くと、すぐにワシャに「ワルシャワ君、すぐに出かけよう。詳細は車の中で話す」と言うのである。
 ワシャはすぐに車を手配し、クレーマーの事務所に向かう車中で事情を聞いた。
「イベントの進行表がわかりにくい」
「席割りがどうも納得できない」
「ひな壇の並びがおかしい」
「関係者との打ち合わせが滞っている」
「看板の書体が気に入らない」
「担当の対応が悪い」
「このシナリオでは貴社は大恥をかく」
「私は大会社の重役を知っている」
トヨタ生産方式ならこのイベントは0点だ」
「味噌も糞もみんな気に入らない」
 このクレーマー、いろいろと並べ立ててはいるが、要するにイベントの打ち合わせや調整に担当しか顔を出さないのが気に入らないということらしい。「俺様と話がしたいなら役職者が出て来い」ということを婉曲にねちっこく遠回りにくどくどと言っているだけなのだ。
 部長もその辺りを察したらしく「すぐにお邪魔します」ということにしたらしい。それでもイベントの内容もしらないのではどうしようもないので、担当係長のワシャも同行ということになった。
(下に続く)