ジャック・ワイルド

 訃報ばかり続くが、昨日、中日新聞で、英国の映画俳優ジャック・ワイルドが1日に死去したと小さく報じていた。また昭和の想い出が逝くか……
 1971年の英国映画『小さな恋のメロディ』にギョロ眼のワルガキ少年、トムとして登場する。
 物語はこうだ。
 イギリスのパブリック・スクールに通うダニエル(マーク・レスター)が同級生のメロディ(トレーシー・ハイド)と恋に落ちる。子どもたちは二人の恋に理解を示さない大人たちに叛旗をひるがえし大騒動を起こす。その騒ぎの中、ダニエルとメロディはトロッコに乗って、草原を走り去ってゆく。
 というもので、このドラマの重要なスパイスとしてトムが存在している。親友ダニエルの気持ちが徐々にメロディへと傾いてゆき、男同士の友情にひびが入り出す。それを必死に食いとめようとするのだが、ダニエルのメロディへの気持ちが真剣なことを悟ると、二人の恋を成就させようと一所懸命に奔走する、という健気な少年を演じている。
 彼から教えられた「ピュアな心」は世知辛い世間を泳いでいる間に失ってしまったが、それでも、二人の結婚式を見守るトムの純粋な眼差しは未だに脳裏に残っているし、メロディの元へ去っていこうとするダニエルを呼ぶトムの声……「ダニー!」「ダニー!」「ダニー!」これも耳朶にこびりついている。

 大好きな役者がまた一人逝ってしまった。