SASUKE

 ワシャはバラエティー番組が嫌いだ。芸人が司会をしてその他の二流芸能人が井戸端会議的トークをする番組がとくに嫌いだ。「行列のできる法律相談所」「あるある大事典」「脳内エステIQサプリ」「さんまのスーパーからくりTV」「ズバリ言うわよ!」「踊る!さんま御殿!!」などなど列挙したらきりがない。ま、どうせこんなアホ番組は見ないからいいんだけどね。
 でも、いい番組もあるぞ。「SASUKE」である。詰まらないシナリオもくだらないトークもない。あるのはひたすら難しい道程を己の肉体のみを酷使してクリアしようというひたむきな思いだけで番組が成り立っている。ここに出てくるアスリートたちは、バラエティーの芸人が百万の言葉を費やしても伝わらないものを、わずかに数十秒で表現してしまうのじゃ。
 だから「SASUKE」の時だけは居間のテレビの前を占領する。最後は年末の30日だったから、そろそろ見たくなってきているが、次は春先になるだろう。
 と、思っていたら、ひょんな所で「SASUKEオールスターズ」のメンバーで97番の竹田敏浩くんに会った。消防のオレンジ活動服でSASUKEに挑戦する岐阜県揖斐郡消防組合の消防士の竹田くんである。暇つぶしに寄った近所の消防署のカウンターに彼がいた。もちろん本人ではない。「消防団員募集!」チラシの表紙に竹田くんが写っていたということなんだけど、ううむ、耐火スーツを着こんで筒先を構える竹田くんはなかなか凛々しくですぞ。今や日本で一番有名な消防士さんだろう。
 彼らのSASUKEに賭ける真摯な情熱がワシャら凡人の琴線に触れ、感動を与えてくれるのじゃ。
「ありがとう竹田くん」とカウンターのチラシに手を合わせるのだった。

 どこかの番組で清原番長が「イチロー」のことをこう言っていた。
「彼は野球に対してものすごく熱い。すごい情熱を持っている」
 そう、だから見るものに感動を与えるのである。芸人も芸を極めることに精進しなければならない。さんまや紳助のような雑談では感動どころか笑いすら生まれない(ワシャ本当にこの二人で笑ったことがない)。
 ひるがえれば、ワシャもただ漫然と生きていてはいけない。人生はすでに午後の日差しの中にある。

 作家の鈴木輝一郎さんが言った。「もっと熱くなろうよ!」「もっと思い込もうよ!」
 仰るとおりです。