不良(つっぱり)の効能(後編)

 昨日の続きだけど、昭和50年ごろには駅前にその地域の不良がたむろしていたわけで、よそ者やおかしな奴がうろついていると必ずその網にかかったものだ。ただ不良たちは地元の住民には妙に気兼ねをしていて、駅前商店街のオヤジさんあたりから、
「高校生のくせに偉そうに煙草くわえているんじゃない」と叱られたりすると、こそこそと逃げたりするかわいさを持っていた。
 もちろん不良たちは子どもをいじめたり、婦女子に乱暴するなんてことは絶対にない。そんなことをするやつは卑怯者と呼ばれてしまう。今、思い出してみれば不良たちは間違いなく町のコミュニティの中に存在していた。好意的に解釈すれば農村の若衆制度の延長にあったと言えるかもしれない。
 先日、平日の昼間に地元の駅頭に立った。
 改札から駅前広場に下りる階段下に、目つきのおかしい浮浪者が立っていて、どろんとした眼で上を見上げている。女子高生たちはその浮浪者を認めると、その階段を降りるのを止めて、別の階段へ回っていった。
 駅前には3人の外国人もいた。何か大声で話しているが日本語ではないので理解不可能だ。歩道の真ん中でくっちゃっべっているので、ワシャの前を行く老人は車道にはみ出して通っていった。
 ワシャはそのまま歩道を進みながら、大きく咳払いをしたのだが、外国人、意に介す様子もない。このまま行けば衝突してしまう。困った……
 そこへバラバラっと現われたのが、長ランスカマンの不良たちだった。
「おらおら、天下の往来に突っ立っているんじゃねえ。道を開けろ」
 すらりとしたわりと格好のいい不良が、一番体格のいい外国人の肩をドンと突いた。外国人は顔色を変えて「★×□△:¥☆▲@!」と叫んだ。
「ここは日本だぜ、日本語を話せ!」剃り込みのきつい小柄な不良が噛みつく。小 競り合いが起きたが、あっという間に外国人を歩道から排除してしまった。ありがとう、地元の不良たち(合掌)。
 と、思ったら、それは白昼夢だった。
 相変わらず歩道上では3人が立ち話をしている。車道に下りるのも業腹なので体を斜めにして3人の関所を通過した。
 カムバック!田舎の不良たち〜!