年末警戒

 暮れも押し迫って防火、防犯のために地元の消防団が年末警戒を始めた。27日、28日、29日の3日間、町を放火や理不尽な暴力から守ってくれる。ありがたいことだ。ワシャも地元の人間として、感謝の意を表すべく(けっして酒があるからではありませんぞ)消防団詰所に陣中見舞に赴く。
 詰所に行って驚いた。赤色灯のついた建物が町の一角でひっそりと静まり返っているではないか。中に入ってみれば、消防団員とOBたちがお通夜のようにテーブルで身を寄せて小さな鍋を突ついている。
「どうしたの?」
と訊ねると、事情はこう話した。
「昨今、周辺住民の権利意識が強くなって、おおっぴらにシャッターを開けて警戒をしていると、『うるさい』ということで消防署に通報される。もちろん警戒をしている団員は一滴の酒も飲んではいないが、OBたちが飲酒するのにもクレームがつく」のだそうだ。
 だから、こんなに静まり返って遠慮しいしい警戒しているのか・・・何かおかしくないかい。
 年末警戒は一種の年中行事だ。年末になるとバカな輩が放火したり、犯罪を起こしたりする。これを防止するために町の若い者が集まって寝ずに町の番をしてくれるのである。感謝こそすれ苦情を持ちこむなどということがあっていいのか。むしろ自宅の近所で夜っぴて派手派手しく警戒してくれれば枕を高くして寝られるというものだ。警戒車両が出入したり人の声がしてうるさいかもしれないが、それでもわずか3日のことじゃないか、もっと大らかになれないものだろうか。
 とみに最近消防団への風当たりが強く「消防団車両をコンビニに停めて買物をしていた」「消防団への町内会負担が多すぎる」「集会があるたびに詰所周辺に車があふれて邪魔だ」「町内会の行事を手伝いたがらない」
 おいおい、何をおほざきあそばしているんだ。
 消防団が赤い車でコンビニに立ち寄れば、コンビニ強盗は絶対に入ってこないんだぞ。消防団=屈強な若い衆というイメージがあるから犯罪者どもには強烈なプレッシャーになる。
 町内会から消防団に補助を出してどこが悪い。普段から特定の若い衆に手当てを与えて緊急時に備えておくことが大切じゃないか。
 自分は何もしたくないくせに、ひたすら苦情だけを寄せる低レベルな市民が増殖している。こいつらのお蔭で消防団の若者たちがどんどんやる気をなくしていくのだ。文句があるなら5年でも10年でも消防団をやってから言ってみろ。
 ということで、今夜も陣中見舞に行くのだった。