スケールは100万分の1

 この3日ばかり、西太平洋を縦横に駆け回った勇士たちの話をしてきたが、今日は、ぐーっと活動範囲を小さくして、それこそコロンバンガラ島よりも小さい範囲で活躍する人たちのことを書きたい。

 昨日の中日新聞である。《消防団員募集中 消防団活動動画でPR 県がネット公開、加入呼び掛け》という見出しがあった。要は消防団のなり手がなくて困っているというもので、愛知県も必死に広報活動をしている。

https://shobodan.pref.aichi.jp/

 愛知県によれば、県内の消防団員は2000年の26,879人から4000人減少して、現在は22,764人となっている。おそらく幽霊団員も多いだろうから、実数はこれをさらに下回るだろう。

 ワシャは若かりし頃に消防団員を7年間やっている。最初は「3年でいいよ」と勧誘されたのだが、入ってみれば当時からなり手はいなかった。だから、後釜が見つかるまで4年も延長された。

 まぁいい経験をさせてもらったと思っている。なにしろ火災現場では最前線で消火活動ができるし、3月から6月までは「操法大会」という消火技術を競う大会があって、そのための練習を連夜行う。夜の8時頃から近くの小学校に集まって、ホースを伸ばしたり、水を出す手順の訓練をなんどもなんども繰り返す。2時間ほど練習をして、それから詰所やいきつけの居酒屋で反省会。帰宅すると日付が替わっていたなんてことも頻繁にあった。それでも自治体の大会で優勝をすると嬉しかったし、3年連続で優勝して「優勝旗」を下された時の誇らしい気持ちはたまりませんぞ。

 とはいえ、なにしろ拘束時間は多く、それこそ分団長、副分団長になると受令機という火災が起きると呼び出し音の鳴る機器をつねに持っていなければならない。火災出動が掛かると、すぐさま、団員は招集に応じて消防車に乗り現場に向かう。これを1年やって幾らもらえると思います?

 うちの自治体で団員は37,600円もらえる。月ではありません、1年でこの金額です。月額3,000円ちょっと、あ~た、小学生の小遣いじゃないんだから。こんなんで、使命感に燃えた若者がわんさか集って来ると考えるほうがあまいんじゃないの?

 もちろん火災出動、訓練、会議に参加すると、別途費用弁償として1日幾らで金をもらえるが、それにしても職務報酬が低すぎませんかってんだ!

 田舎のほうに行くと「ご無沙汰金」といって、同年の連中が消防団員をやってくれている同級生になにがしかの金を払うことになっているところもある。そうすると同級生が20人いれば、例えば5万円のご無沙汰金なら100万円が消防団員に与えられることになり、これならまだ遣り甲斐があったろう。

 たまたまワシャは町場で消防団をやったので、「ご無沙汰金」制度がなかった。だから市内でももっとも貧乏な消防分団だった(泣)。

 なにを言いたいかというと、消防団員のなり手が減少しているのは「金」に尽きるということである。年額37,600円を376,000円にしてごらんなさい。団員は苦もなく集まると思う。

 無償で(無償に近い格好で)、人の善意を当てにするのは昭和で終わっている。今、祭でもないのに地域の若い衆が一カ所に集まってわいわい酒を飲むなんて要る時代ではない。だから地方では消防団員の高齢化が進んでいる。

 本当に地域の消防として善意の消防団が必要であるなら、それに見合うだけの報酬を支払えばいい。それなりの待遇を与えればいい。最近は火災現場の最前線にはなかなか立てないようだが、やじ馬ややじ車の整理をするだけでも大変な労力なのである。

 掛け声ばかりではなく、金を出せ。市民の生命、財産を守るためなら、当然のことだろう。