鉄ちゃんと駆っちん

 以下は、ジャーナリストの日垣隆さんがとある講演会で話題にした「修善寺の鉄ちゃん旅館」の話である。
 修善寺の老舗旅館の息子が父親から旅館を継ぐように説得をされていた。しかしその息子は旅館を継ぎたくない。すったもんだの親子喧嘩の末に、鉄道ファン(鉄ちゃん)の息子が跡を取る条件として提示したことが、「旅館の中に模型の鉄道を敷かせてくれるなら・・・」ということだった。背に腹は替えられないので、父親はしぶしぶその条件を飲んだ。息子の鉄ちゃんは嬉嬉として老舗旅館の全ての部屋に鉄路を張り巡らせたわけである。
 跡は継いでくれたもののこれでは父親「とほほ」だったに違いない。
 ところが、あに図らんやこれが大当たりとなった。全国からこの旅館を目指して鉄ちゃんたちが修善寺に続々と押しかけたのである。お蔭でもう一つ人気のなかった旅館は連日大入り満員となったのだそうだ。
 我社にも鉄ちゃんがいるので、「その旅館に行ったことがあるか」と訊ねてみると、やはり行っていた。それも我社の鉄ちゃん仲間十数人で押しかけたそうだ。そしてずーっと鉄道模型を楽しんで終電になったので就寝したとのこと、ご就寝様。

 昨日、本屋に寄ったら入口のところに「駆逐艦」という写真集があった。手にとってみるとA4横サイズのかなりずっしりとした本である。表紙は白露型「春雨」の写真だ。全長103mの一等駆逐艦浦賀沖を時速63キロで疾駆している。いやぁ格好いいですなぁ。実を言いますとね、ワシャは「駆っちん」にかるく染まってまんねん。
 鉄ちゃんにしても駆っちんにしても、機能最優先の美とでもいいましょうか、マシーンとしての剥き身の美しさがいいんですね。
 おおお、名鑑「雪風」も載っている。この艦は陽炎型の一等駆駆逐艦で全長111m、出力52,000馬力、12.7cm連装砲3門、魚雷発射管3連3門を装備している。この程度の装備はどの艦にもついている標準装備なのでどうということはないのだが、ではどこが名鑑かというと、この駆逐艦昭和15年に竣工して以来、レガスピー急襲作戦を皮切りに17度の戦闘・海戦に出撃し終戦まで生き延びた海の勇者なのである。有名なところではミッドウェイ海戦、南太平洋海戦、第3次ソロモン海戦マリアナ海戦、レイテ沖海戦など大海戦に出撃している。錚々たる戦歴といっていい。
 おっと駆っちんが調子にのってしまった。そうそう駆っちんはね、修善寺ではなく呉の「大和ミュージアム」に行こうと目論んでいるんですぞ。ムフフフ・・・