哀れな退職公務員

 大阪府下の自治体で退職直前職員の中途退職が激増しているという。理由は「ヤミ退職金」と指摘された互助会退会給付金の廃止を見越してのものである。
 そりゃぁそうだわな。半年待って定年退職する時点で退会給付金が廃止されていれば960万円がもらえなくなってしまう。今、辞めちまえば退会給付金を丸々手にすることができる。退職までの6ヶ月でもらえる給料はどう見積もっても500万円程度である。早く辞めて460万円もお得なら、そりゃ辞めまっせ。
「地元の実業高校を出て役場に入り、新人のころは先輩に奴隷のようにこき使われ、国や県の役人には虫けらのようにぞんざいに扱われ、議員には媚びへつらい、ようやく肩書きが付いたと思えば、部下についたのはいかにも育ちのよさげな大卒ボーイで、いじめてやろうと思っても、知識も根性もコネの太さも部下のほうが上だった。
 最近はケーブルテレビで『議会中継』が放送され、不様な棒読み答弁が全市民に晒されてしまう。業者からのお歳暮ももらえないし、接待も受けてはいけない。お蔭でただ酒が飲めないじゃないか。昨今は市民が勉強しているものだから、突き上げはきつくなる一方だ。煙草も吸いづらくなったし、仕事中に居眠りさえできない。こんなことなら早く辞めで楽になりたい」
 大阪府大東市守口市などで9月に70人が退職している。その大半の職員の胸中はこんなことだろう。
 しかしね、もし彼らに公務員としての責任感(誇りと言い換えてもいい)が、少しでもその胸中にあれば、年度途中で仕事を放棄する愚挙には出ないはずだ。
 彼らの公務員人生を眺めれば同情する点も少しはある。でもね、公務員人生の最後の最後にきて「誇り」よりも「金」を選択してしまったというのはあまりにも悲しい。
 差額の460万円は大金だ。ワシャだって喉から手が出るほどほしいわさ、だが、人としての「誇り」を売り払うには、いかにも安くないかい?