ええじゃないか その1

 維新前夜のことである。尾張三河から「ええじゃないか」に火が点き、次第に全国に燎原の火のように燃え広がっていった。
「ええじゃないか」とは何か?
 基本的には慶應3年に起きた大規模な民衆運動のことを指すのだが、広義には江戸時代を通じて周期的に勃発した「おかげ参り」のことをいう。では「おかげ参り」とはなんぞや。これは干支が一運する60年に一度、吉兆の噂が広まるとともに、伊勢神宮のお札が空から降ってきて、このことが契機となって日常的に抑圧されている民衆は集団的ヒステリーを起こし、「ええじゃないかええじゃないか」と踊り狂いながら伊勢に向けて行進するのである。この集団参宮が明和8年(1771)で200万人、文政12年(1830)で500万人に達したと言われている。当時の日本の人口が3,000万人だったことから考えればこの集団ヒステリーの規模がいかに大きかったかが理解できよう。
 昨日、NHKの「ナビゲーション」で愛知博を取り上げていた。人で埋め尽くされた会場を映し出していたが、北ゲートに並ぶ数万の群集、まもなく閉幕ということで踊り狂うスタッフと観客、グローバルループをあてどもなく彷徨する来場者・・・いったいなんなんだこの光景は。
 どこの企業館だろうか(多分、日立だろう)、スタッフがハンドマイクで喚いている。「只今、本館は8時間待ちになっております」ばか者め、8時間あればグアムまで行ってビーチのホテルで太平洋の夕景を楽しみながらペッパーステーキをゆっくりと食ってまた日本に戻ってこれるほどの時間だぞ、それだけ待たせて何を見せようというのか、何を見ようというのか。
番組では踊り狂い感動しまくっているスタッフにインタビューしていたが、
「このままずーっと続いてほしいわ!」
「愛知博、サイコー!!」
「楽しー!!!」
 なのだそうだ。
 そりゃそうだな、入場者を排除してでもてめえらの飯を食う場所だけは確保しているくらいだから。
http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=427365&log=20050720
 2,200万人を超える平成の集団ヒステリーはようやく終わろうとしている。地元民としては実はほっとしているのである。
(「ええじゃないか その2」に続く)