寅さん

「例えば、夜汽車の中、いくらも乗っちゃいねえその客もみんな寝ちまって、なぜか俺一人いつまでたっても眠れねえ・・・真っ暗な窓ガラスにホッペタくっつけてじっと外を眺めているとよ、遠くに灯りがポツンポツン・・・あー、あんな所にも人が暮らしているんだなあ・・・汽笛がポーッ、ポーッ・・・ピーッ、そんな時よ、なんだかわけもなく悲しくなって、涙がポロポロと出たりするのよ。そういうことってあるだろう、おいちゃん。」
 今、NHKBS2で「男はつらいよ 失恋48連発」が放送されている。冒頭は「11話 寅次郎忘れな草」の中で寅さんがとらやの茶の間で放つ名科白である。
こうしてみると寅さんというのは詩人だなぁ。
この作品は9月17日に放送する。シリーズ最多出演の浅岡ルリ子(リリー)の初お目見えの作品で、シリーズの中でも名作といっていい。とくに冒頭のシーンだけでも一見の価値あり。
 確認のために「男はつらいよ」のシナリオを引っ張り出して眺めていたら、思わず真剣に読んでしまった。リりーとの出会い、再会、茶の間での会話、冒頭の科白に続きおいちゃんの科白が笑わせる。「うん、よくススが目に飛び込んでくるからな。しかし近頃はたいがい電気機関車だろう」
 今日は、昭和44年に「男はつらいよ」の第1作が公開された記念の日。