さよなら、おばちゃん

 どんどんと寅さんの痕跡が消えていく。また、大切な家族が彼岸に旅立たれた。「おばちゃん」こと三崎千恵子さんである。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120214-00000081-spnannex-ent
1993年、まず御前様が身まかる。1996年にはタコ社長が逝く。おいちゃんは2004年に亡くなった。
 寅さんの帰りを待つ年配グループが次々にいなくなる。寅屋の茶の間もずいぶん寂しい風景になった。
 おばちゃんと言えば、「男はつらいよ史」に燦然と輝く大喧嘩、あの「メロン騒動」の口火を切ったことで有名だ。

 寅次郎が一緒に旅をした男からメロンをもらった。そこにリリーも参加して、おばちゃんが人数分に切り分ける。さあ、茶の間で食べようか、というタイミングで、寅次郎が帰ってきて、前の道でお向かいに声を掛けている。
寅「よお越後屋、元気か」
   一同ハッとして顔を見合わせる。
つね「あらいけない、寅さんの分忘れちゃった」
 ここから寅と家族、そして後に参戦してくるリリーとの大バトルが始まる。

 おばちゃんが「あらいけない」とか「あらいやだ」と言い出すと、必ず険悪な次の展開が始まる。これが楽しみだったなぁ。
 また、夏のシーンでおばちゃんがかく白いカキ氷が美味しそうだった。映画館でスクリーンを観ながら「帰りにカキ氷を食べよう」と思ったものである。あれも遠い夏の日のことだ……。

 器用な女優さんではなかったが、寅次郎の叔母という不動の役を演じきった。昭和になくてはならなかった名女だと思う。
 
 ご冥福を祈る。