選挙近し

 政治家という仕事は、実に簡単な仕事なんだね、だってさ、父親が死んだからといってそれまでOLだった娘がすぐに代打で選挙戦にうって出て、で、政治家になっちまうんだもの。今度の総選挙でもそうさ。旦那が死んだからって、何も嫁さんが出ることはないんじゃないの?適性っていうものもあるだろうしさ。
 例えば大工のかみさんが、旦那が倒れたからといって、「代わりに鉋かけにきました」ということにはならないでしょ。誰だってできる公務員だってさ、戸籍課長の父の代わりが民間企業に勤めているお嬢さんに務まるもんじゃない。だいたい勤めってものはそういうもんでしょ。素人がひょいと現れて、明日から同じお勤めができるなんて仕事は政治家を除いて他にはないやね。
 つまり奴らもったいをつけていやがるが、財産があって、暇があって、ふんぞり返るだけの腹筋を持っていれば誰でも勤まるっていうのが「政治屋」ってことだがね。要するに名誉職なんだから、ことさらに奉る必要もない。だから給与だってたくさん払うことはないし、政務調査費だって自弁すればいいんだ。元々、金のあるやつらなんだし、誰がやったってできるくらいの仕事しかしていないんだから。
 衆議院は解散されちゃったけど、全議員480人中130人が世襲だ。本人の適性とか意思とは関わりなく、お父ちゃんが代議士様だったからとか、お爺ちゃんが議員先生だったからという議員がこれほどいる。江戸の封建制は形を変えまだ脈々と続いているんだね。「じいちゃんの時代から・・・」とか「お父さんにお世話になって・・・」とかがあるから癒着、贈収賄などがあとを絶たないわけだよ。
 歴史を見よ。日本の政治が輝くときというのは、必ず政治に新たな血が注ぎ込まれたときである。政治を鬱血させてはいけない。
 地縁、血縁が地方政治を牛耳り、その延長線上に国政があるから三流の政治しかできないんだ。地盤も看板も鞄もなにもないけれど、明敏な頭脳と国を憂う心を持つ若者が、政治に参画できるシステムを早く構築しなければ炉心の溶けかかったこの国を立て直すことは難しいだろう。
 痛ッ!ワシャの腰を立て直すのもそうとう難しい。今も横になって片手でキーボードを打っている。以上の文章を打つのにも必死だ。