死因について

 人間、死ぬのは1回きりだけど、死因は腐るほどあってどれで死ぬのかは特定できない。
 福沢諭吉は脳溢血で亡くなっている。第58代総理大臣の池田勇人喉頭ガンで死んだ。ジョン・ウエインは肺ガンが元で死亡した。新田次郎は自宅にて心筋梗塞で急死する。夏目漱石胃潰瘍が原因で他界した。アンデルセンは海沿いの別荘で肝臓ガンによって死ぬ。新渡戸稲造はカナダにて出血性膵臓炎で急逝する。伊達正宗はがん性腹膜炎で三途の川を渡った。アラビアのローレンスはオートバイで事故死している。坂本九は飛行機事故で御巣鷹山に消えた。武者小路実篤は妻の死をきっかけに以来食事を摂らずこの世を去っている。力道山は他殺だ。
 このように人の死に方というものは実に多様である。しかしその人の死因は残念ながら一つしか選べない。
 例えば検査をしたら喉頭ガン、食道ガン、肺ガン、胃ガン、膵臓ガン、肝臓ガン、大腸ガン、直腸ガンが同時に見つかって、それじゃあ人生最後にと海外旅行に出かけたところ飛行機事故に遭遇し、墜落の恐怖で心筋梗塞くも膜下出血を併発し、おまけに大動脈瘤が破裂したところへ、ギャングのボスと間違えられチンピラに日本刀で斬りつけられて出血多量になったので身をはかなんで服毒自殺を図る、これだけそろえば人生諦めもつくというものだ。

 山田風太郎が「人生臨終図鑑」全3巻を出している。これを読むと彼岸も随分と賑やかなようである。