紫陽花

 以前に、「花は花札の花しか知らない」と書いたが、実はその他にも知っている花があった。紫陽花である。遠い昔・・・幼稚園の出席ノートの6月に貼るシールは小さな紫陽花だった。
 紫陽花、語源は「アヂ(集)まる」「サ(様=様子)」で「アジサ」「アジサイ」となったとか、「アヂ(集)サヰ(サアヰ=真藍)」からきたとかの説があるらしいが、そんなことはどうでもいい。それよりも問題はワシャの通勤路の小道に毎年いっぱい咲いている紫陽花のことだ。
 その紫陽花がこのところの日照りですっかり元気がない。露を浴びてこそ輝きを放つこの花が無情にも太陽に苛まれ色褪せている。梅雨入りが宣言されて久しいが、一向に雨になる気配はない。
「言問わぬ木すら味狭藍諸茅等(あぢさゐもろちら)が練の村とのあざむかえけり」
 万葉歌人大伴家持の歌である。上古より紫陽花は人々に愛でられ、梅雨を彩る風物として親しまれてきた。そんな紫陽花にとって雨降らぬ今年は厄年かもしれない。
 明日あたり弱い雨がパラパラとくるらしいが、それだけで当分まとまった雨は期待できそうもない。豪雨でなければ渇水ってか、この国の穏やかな四季はどこへいってしまったのだろう。