多彩な言葉

 今朝は、雨が降っていませんな。梅雨なのに。降ったり止んだり、まことに梅雨らしい天気である。

 ワシャの家の横に自転車緑道がはしっているのだが、その緑道のところどころに「アジサイ」の花が咲いている。「あずさえ」はやっぱり雨が似合う。晴れた日の「手毬花(てまりばな)」ときたら、パサパサした遣り手婆の印象だ。その点、雨の中の「七変草(しちへんそう)」は遊郭から現れた化粧坂の少将みたく艶っぽい。やっぱり「紫陽花(あじさい)」は紫がいいでゲスな。「かたしろぐさ」の白もいいけれど、やっぱり紫や「紅額(べにがく)」の赤がいい。色目があったほうが、色っぽくて「刺繍花(ししゅうばな)」らしくていいですね。最近は通勤路が変ってしまって緑道に咲き誇る「瓊花(たまばな)」は楽しむことができなくなったが、住宅街の路地裏の軒下に「八仙花(はっせんか)」が咲いているので、その「しちだんか」の満開を楽しみしている。
 ふう……アジサイってなんでこんなにも名前が多いんだ。上記の「  」書きはすべてアジサイのこと。さらに言えば「大手鞠(おおでまり)」「てんまりばな」「てんまるばな」「てまるかん」などという方言もあるから、そのバリエーションはすごい。いやー、調べるのに朝から大変でしたぞ。なにしろ、『広辞苑』では載っていない言葉が多く、『日本国語大辞典』と『歳時記』を駆使して拾い出してきた。それにしても日本語というのは多様ですな。
 なんで朝からこんなことに時間を費やしているのかというと、先日、友だちからアジサイのしおりをいただいたのだ。ワシャはいろいろなものを集めているが、しおりも大好きで旅先でも面白そうなしおりを買って帰ってくるんですよ。
 でね、友だちからもらったのは、和紙に藍と紅の「紫陽花」が型染めされたもので、しおりの間に香が挿んであるものだった。そのしおりが鎌倉の「四葩(よひら)」というお店のものだった。
https://www.yohira.jp/
 ここですな。この店名の「四葩」もアジサイのことで、とてもすてきな響きではありませんか。「葩」なんていう字は知りませんでしたぞ。漢音では「ハ」。日本では「はな」とか「はなびら」「ひら」と読むらしい。