自治会費等請求事件

 地域コミュニティが崩壊しはじめている。
 知り合いの自治会長は昔ながらの農村集落に住んでいるのだが、近年、その町の一角にマンションが建ち始めた。このためその町の人口は増加の一途をたどっている。2年ほど前からは新旧住民の人口が逆転し、その差は拡大する一方となった。
 ところが町内会活動となると新住民(マンション族)の参加は悪い。例えば町の役(民生委員とか福祉委員など)は理由をつけて忌避をするし、町内会費の納入でもあからさまに嫌な顔をするという。このために役は概ね旧住民(集落)から出し、町内会費についても、若干、割り引かざるをえないという。
 確かに町内会という組織は任意団体であり、会計についても不明朗なところがあることも否定しない。しかし、阪神・淡路大震災でも新潟県中越地震でも、お節介なくらい地域コミュニティがしっかりしていたところほど被害は少なかったことも事実だ。
 一時期の個人主義、平等主義の蔓延で、危機に瀕していた地域コミュニティが幾つかの災害を経験することによって、息を吹き返しつつあったのだが、昨日、最高裁が「団地自治会『退会は自由』表明後の会費、不要」という判決を出して、せっかく盛り上がり出した地域連携の流れに冷水を浴びせる格好となった。
 さすが庶民感覚からもっとも遠いところにおわします最高裁判事様でございますなぁ。
 この判決は、今後の地域活動について致命的な一撃を与えることになる。だって、誰だって面倒なことはやりたくないんだからさ、例えばゴミだし当番だってしたくないし、町内会の理事だってやりたくない。消防団員にもなりたくないし、防災訓練の準備だってしたくない。だけどゴミは持っていってほしいし、回覧板だって見たい。火事は消して欲しいし、災害の時は一番に助けてほしい。権利は主張したいが義務は務めたくない、そんな住民のエゴが大手を振ってまかり通っていくということを最高裁様は認めてしまったのである。
 全国にどれだけの自治会長さんが日日、地域のために汗を流していることだろう。この判決は、そういった人の活動を大きく阻害することになるだろう。
 多分、この判決を出した判事様も地元の町でなんにもやっていないだろうね。でなきゃ21世紀の地域崩壊を決定づけるこんなバカ判決を出せるわけはない。
 この国の裁判官がいかにバカタレかについては、日垣隆著「裁判官に気をつけろ!」に詳しい。是非、ご一読をお薦めする。