自分の評価

 二人の知の巨人が言っている。
 一人は、立花隆に追いつき追い越そうと一念発起し、立花隆が月に100冊の本を読んでいることを知るや、自分にもそのノルマを課してあらゆる分野の書籍を乱読している日垣隆である。彼は言う。「物書き業界に入った18年前、トップランナーたちは毎月その程度の本を読んでいた。彼らは知名度も、仕事量も、貯蓄も、体験知も、新人とは比べ物にならない。そのトップランナーが毎月毎月最低限やっていることを、20年近くも遅れてきた新人が、その程度のメニューをこなさなければ、その差がぐんぐんもっと開いてゆくのは明かだった。」このトップランナーというのが立花隆である。それにしても月100冊の本の読破とは・・・いやはや凄まじい読書量だ。そして日垣は続ける。「自分が天才肌だと思っている人は、あまり努力をしない。努力とは、自己評価が低いゆえの向上心の発露だからである。」
 そうか、この人は自分のことをまだまだ不充分だと思っているんだ・・・凡人から見上げれば充分に天才肌だと思うのだが、そういう評価を自分自身に下していないんだ。
 もう一人は「バカの壁」で一躍有名人になってしまった養老孟司である。彼は言う。「私は医者にかかるのが嫌いだ。なぜかと言えば自分が解剖学を教えた医者を信用していないからである。延いては彼らを教えた自分を信用していないからである」と。
 彼もまた自己評価が低い人間の一人である。だから自分にいろいろな課題を課して少しでも向上しようと努力しているんだ。
 私が尊敬する文化人二人は実に謙虚で、そして努力家だった。
 たまたまこの文章に三人の文化人の名前を出した。名前を間違ってはいけないので、2日前にも登場した「TVスター名鑑2005」で確認をしたのだが、三人が三人とも載っていなかった。結構、意外だった。で、載っているのは田嶋陽子だったり佐高信だったり北野大だったりするのだが(笑)、この三人は間違いなく自己評価が高く、月100冊というような努力をしていないタイプの人間だ。それは断言できる。
 本物はマスコミにちょろちょろと登場しなかった。それはそれで格好いいなぁ。