今日の出来事

 近くの公民館で、とある会社が社員の余技の展示会を定期的に実施している。絵画あり、写真あり、陶芸あり、いろいろな特技を持った方がいるもので、暇なときにはのぞきにいく。
 今日行ったらば、展示会場にその会社の重役らしき人がいて、受付の若い男(部下なんだろうね)に話しかけていた。
「今年は出品が少ないのではないか」
「はい、去年の70%しか出品がありませんでした」
「どうしたというんだ、もっと出品させないとだめじゃないか」
「申し訳ありません」
「こんなことでは来年は中止になるかもしれんぞ」
 ううむ、そう言われれば、去年の展示会と比べると随分と隙間のある展示になっている。そうか、出品が減ったか。
 やがて重役が消えて若い男が受付に一人残った。さっきの会話が気になったので、受付の男にきいてみた。
「ねえねえ、何で出品が減ったの?」
「そりゃぁそうでしょう、余技なんてものは余裕があるからできるんですよ。リストラだ、競争だってケツを叩かれて、朝から深夜まで働かされて絵なんか描いている暇なんかあるわけないでしょ」
「なるほど」
「余裕があるのは重役や幹部連中だけで、あたしらは酷使されてまんねん」
「それでもこんな展示会を実施できるくらいだから余裕あるんじゃないの?」
「社員の福利厚生の一環というわけですわ」
「社員の福利厚生に資するための活動が、図らずも社員の追いつめられた状況を露悪してしまったということね」
「う〜ん、あなたの言っていることはよく分りません」
 分からないなら別にどうでもいいので、会釈をすると会場を後にした。