死神尽くし

 週末に古〜い同僚3人と一緒に飲んだ。3人の中の1人が昇進したので、その御祝いをささやかにやろうということで新幹線の駅前の居酒屋を梯子した。
 元々は4人の仲間だった。しかしもっとも優秀だった1人は15年ほど前に旅先のホテルで急死した。生きていれば間違いなくその会に顔を出していただろう。
 そいつはね、ワシャと同年の男で、幼稚園の頃からの付き合いで、要は幼馴染というやつですわ。当時、駅前商店街の神童(笑)と呼ばれていたワシャよりもさらに頭のいいやつで、就職してもなにしろ切れ者で、切れ過ぎる刃物は扱いが難しいから、上司たちに敬遠されたのだろう。出世はなかなかできなかった。
 係長になるのも遅かった。それもヤツが「愚鈍な連中」と思っている同期同年に先を越されてしまっていたから、幼稚園の頃から己の力量に自信のあった野郎はずいぶんと傷ついていたと思う。ストレスも多く、それが直接の死因とは言わないが、ずいぶん神経的にはまいっていたのではないだろうか。
 どうも凸凹商事は、押しなべて真面目な社員を好むようだ。もちろん組織というのは真面目な社員が構成しなければ成り立たない。でもね、ちょっとスパイスも効かせておかないと、味気ないどんぐり弁当になっちまう。
 ヤツの性格は尖がっていたが、教養は深かった。話をしていても面白かったし、機転も利いた。ああいうのを容れておく余裕が組織にあると、その組織は活き活きと動き始め、いい仕事をするんですがねぇ。
 普通のサラリーマンの世界であろうと、落語の世界であろうと、一所懸命にやるヤツもいれば、手を抜いて楽をしようとする連中もいる。必死に取り組むのもいれば、みんなと一緒に並んでいけば安心だと思っているのもいる。まぁいろいろなヤツがいるから、この世は面白い。
『落語心中』のことを書いていて、そんなことを思ったのである。

 あ、もうひとつ思い当たった。ちょっと前に『デスノート』という漫画が売れましたよね。あれは落語の「死神」の焼き直しだったんだ。さらに最近木梨則武で映画になった『いぬやしき』もさらにその焼き直しなんですね。
 このところ『落語心中』、『デスノート』、『いぬやしき』を固めて読み直している。ついでに『圓生古典落語』の「死神」も読んでいる。You Tube志ん朝の「死神」も聴いた。「死神尽くし」ですな。