東には魑魅魍魎

ロードオブザリング王の帰還」で黒の門での戦いで、門から現われるオークの大軍勢にたじろぐ白の勢力に向かって大将アラゴルンが馬上でこう言う。
「踏みとどまって戦うのだ。西方の勇者たち!」
 なーんだ、そうだったのか、と思った。あのオークやウルク=ハイは黄色人種だったんだ。そう言えばがに股だし色もついているし・・・要するに白人VS有色人種という図式なわけね。ゴンドール攻防戦でも、闇の勢力で巨象部隊が登場するが、象を操舵していたのはモロに黒人だったし、象の上から弓を射ていたのはご丁寧にターバンをかぶっている。ストレートにアラビア人である。それに卑怯で薄気味の悪いゴラムは間違いなく日本人だよね、というより宮澤喜一さんだった。
 眉目秀麗で正義は西方の白の人々にあり、ということは闇の勢力は東の勢力であり、西洋人のイメージとして、東は魔物が棲んでいるところであり、災厄は東から来るということだ。つまりこの映画は西洋人の潜在意識のなかにあるモンゴル帝国への恐怖を具現化した作品ということである。
 有色人種をここまでこけにする映画は嫌いだ。まぁ基本的に大味なハリウッド映画はどれもこれも鑑賞に値しないけれど、とくにこれは酷かった。
 それでも資料的な価値は若干あって、例えば「長篠城の合戦」を思い浮かべようとする場合(普通はしないか・・・)ゴンドール攻防戦は城攻め、援軍の到着というところで類似したところが多い。長篠城にこもる奥平一族五百からみれば、城外に布陣する武田勢が闇の勢力に見えたことだろう。そして援軍(ローハンの兵団と死者の軍勢)と闇の勢力が城外決戦をするところなど、鉄砲隊と騎馬隊の死闘を繰り広げた設楽原の戦いを彷彿とさせる。
 この物語はなにも荒唐無稽な話ではなく、実際に世界のあちこちであった人間の物語を白人賛美のためにアレンジしてつくった駄作と言うことである。