ある本屋の死 その1

 シナリオという雑誌で野沢氏を始めて見たのは1985年の8月号だったから、ざっと二昔ほど前と言うことになるか。
野沢さんは「V.マドンナ大戦争」で第9回城戸賞を獲り、堂々のシナリオライターデビューだった。城戸賞作家特集の中に掲載されている写真は、最近の厳しい表情の野沢さんではなく、御髪のたっぷりとある25歳の若者で、笑顔がとても印象的だった。
 記事は「新人作家登場」と銘打ち、野沢さんへのインタビューを中心に構成されている。この中で野沢さんはこんな発言をしている。
「(城戸賞を獲る自信は?ときかれて)正直言って、凄くありました。回りの人間には賞獲り宣言をしていたくらいで(中略)かなり期待していて・・・それから賞の知らせを聞くまでの一週間というのが、身を切られるような緊張感の日々で・・・」
「(自分は)早く書けるライターということがあったかもしれません」
「プロットライターの時からこいつは早く書けるから任しちゃおう、みたいなところがありました」
 このインタビューを読んで、野沢さんという人は小心な自信家で、筆の早い人なんだなぁと思った。このインタビューに続いて野沢さん自身が、創作ノートというエッセイを書いている。どうでもいいことだが、その文中に「少年の僕たちは戦場で格好よく戦い、死んでいた」というフレーズを見つけた。
(「ある本屋の死 その2」に続く)