己を知ること

 麻生総務相が講演会で「日露戦争で勝利した。ここ500年ぐらいの間で有色人種が白人に勝った最初の例として、世界中の有色人種に勇気を与えた」と言ったとさ。
 麻生さんがどういったニュアンスでこの発言をしたのかはわからないが、まぁ単純に「太平洋戦争の敗戦ばかりを言うな、勝った戦争だってあるんだ」くらいのつもりで言ったに違いない。
 それはそうだ。「負けた、負けた」と、ネガティブなことばかりを言っていても詰まらない。勝ちいくさだってあったんだもの、そのことを考えることは国家の精神衛生上、よいことなのかもしれない。
 但し、客観的な状況判断を忘れてはいけない。日露戦争はロシアに対して圧勝したわけではないのである。ボクシングでいえばロシア選手にボコボコにされ、ヘロヘロになりながらも、終了間際に繰り出したラッキーパンチが当たってロシア選手が転倒してしまったのだ。立ちあがったロシア選手にはまだまだ余力があったが、アメリカ人レフェリーが割って入って無理やり日本選手の優勢勝ちを宣言したというほどの勝ちかたなのである。試合を継続していれば日本は必ず負けた。
 このことを踏まえて、「日露戦争では日本も善戦をした」程度に喜ばないと、日比谷の焼打事件が起きたようなもので、国民は冷静さを失ってしまうのである。国としての誇りを失ってはいけない。国旗も国家も尊重したいと思っている。だが日本という国家が、食料自給率40%、石油の9割ちかくを中東に依存しているまことに脆弱な国であるということも忘れてはいけない。極東の小さな国だが、国民は勤勉で清潔でおだやかである。と、いうことでいいのではないか。
 夜郎自大になってはいけない。