世襲と書いて 世を襲うとしか読めない

 政治家の世襲は悪である。なぜか?それは徳川幕府がどうして崩壊したのか、考えてみれば簡単に理解できる。
 徳川体制というものは、俸禄を親から子へ、子から孫へとおくってゆく。将軍の子は将軍になるし、大名の子は大名になる。家老の子はよほどのバカでない限り家老だし、勘定方の子は勘定方なのである。その家系にその仕事に向いた人材が現れることもあるだろう。しかし現れないこともある。その確率が五分五分なら、世襲を是とする組織の力はどんどん低下してゆく。
 世襲の代表として歌舞伎がある。団十郎の子は団十郎だし、菊五郎の子は菊五郎になる。歌舞伎も世襲するんだもん。政治でも世襲してもいいじゃん。小渕優子あたりがそういうかも知れない。
 よくない。
 歌舞伎の原則は伝統である。過去に作られた名舞台をいかにして学び身につけ次の世代につないでゆくかが重要なのである。それは親から子へ、子から孫へと口で移すようにして継承していかなければならない。
 では政治はどうか?政治というものは生き物である。もちろん歴史に学ぶことは大切だが、過去と同じ状況が勃発するなどということはほぼあり得ない。つねに新しい形態の問題が次から次へと発生して、そのことごとくに対処してゆかなければならないのが政治である。この複雑怪奇なものに対処するために、研ぎ澄ましたような明敏な頭脳と国を大切に思う篤志を兼ね備えていなければならない。そういった人材を世襲で確保できるのか。昨日までお嬢さんをやっていたような者が一夜で変貌するのか。
「これから育ててゆけばいい」地元でけちな権益にしがみついている守旧派はそう言うだろう。とんでもない。時々刻々、世界の情勢は動いている。即、対応しなければならない問題は山積しているのだ。
パレスチナではヤシン師につづきランティシ氏が暗殺された。それでも指導者は次から次へと登場してくる。ハマスのリーダーが世襲していたら、次は子どもの最高指導者を出すことになる。そんなことをすれば組織はすぐに壊滅することは明々白々、危機的な状況下で権力を世襲しているバカは、日本と北朝鮮だけなのである。
 今朝の新聞に、民主党の3親等内世襲禁止の記事が載っていた。いいことだ。急がなければ、この国の状況は手遅れになってしまう。息子を立候補させていた菅代表もようやく気がついたようだね。