地方という悲劇

 地方という悲劇というよりも、名古屋という悲しさのほうが身につまされる。
 新春を迎えて歌舞伎座では初春大歌舞伎が始まった。団十郎幸四郎吉右衛門、冨十郎、芝翫雀右衛門染五郎、左団次、東蔵段四郎……凄い顔ぶれだ。
 新橋演舞場は「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」である。猿之助の門弟を引き連れて、市川海老蔵が五役を相務め申し候。歌舞伎仲間が中旬に上京して演舞場にゆくそうだ。うらやまちー!
 皇居の西の国立劇場では、菊五郎時蔵松緑菊之助らが「小町村芝居正月(こまちむらしばいのしょうがつ)」を掛ける。国立は通し狂言を1500円で観れるんですな。
 獅童勘太郎七之助ら若手は、浅草公会堂に集合して、「義経千本桜」の「すし屋」や「身替坐禅」を観せてくれる。
 大阪では坂田藤十郎が松竹座で幕を切った。三津五郎翫雀扇雀橋之助などが顔を揃え、上方歌舞伎が気炎を吐いている。
 京都南座は、前進座の初春特別公演「三人吉三巴白波」だ。
「月もおぼろに白魚の、かがりも霞む春の空、つめてえ風もほろ酔いに、心持ちよくうかうかと……こいつは春から縁起がいいわぇ」
 西も東も歌舞伎歌舞伎の花盛りだというのに、なぜかその中間地点の名古屋には歌舞伎の「歌」の字もありゃしない。御園座里見浩太朗の「水戸黄門」、中日劇場都はるみの「新春特別公演」では、ワシャの歌舞伎心が満たされないのじゃ。
 だから地方は、名古屋は悲しい。早く宝くじを当てて上洛を果たすことにしよう。そうしたら東銀座あたりに住みついて、毎日毎日、歌舞伎三昧なのじゃ。だっはっはっはっ……

 あああっ!しまった。年末ジャンボ宝くじを買うのをころっと忘れておったわい。やれやれ。