祝!生還、だから糾弾 その1

 あまりにも脳天気なので書かずにはいられない。
 17日朝日新聞1面に解放された人質女の写真が載っていた。満面の笑みで両手を振っている。あなたは新婚旅行から帰ってきたのか、あるいは金メダルでもとって凱旋したのか。
 この写真を見て思い出したことがある。日本赤軍重信房子が逮捕された時のことだ。報道陣のカメラに向かって、手錠の掛かった両拳を突き出して満面の笑顔で「がんばるから」ととちくるっていた女を。
 どこをどう突ついても、脳天気な人質女は(それがポーズにしろ)報道陣や他者の前では神妙な面持ちでいなければならない。それが脳天気3人組救出にために巨費(一説には4億円)を投じた国民の皆さんへの最低限の礼儀であり、この時点で未だ消息のつかめない安田家や渡辺家への思いやりではないだろうか。
(笑っていたのは一瞬だったらしい。ならばこういう写真を掲載する朝日に問題がある)
 また脳天気ジャーナリストは、解放直後に母親との電話で「けがはない。まだ残って写真を撮りたい」とほざいたそうだ。彼が本当のジャーナリストなら、まず今回の事件でなにがどうなって、自分たちがどういう立場に立たされているのかを確認してから言葉を発するがいい。この人たちは誰のために日本が大騒ぎになっているのかまったく分かっていない。
 しかしそれでも「ジャーナリスト魂」でイラクに残るというなら、コラムニストの勝谷誠彦さんがイラクにゆく際に事務所にあずけていった「特異事態発生時行動指針」を脳天気くんも提出しておけよ。「自分に万一のことがあっても、日本国政府はいかなる妥協にも応じるな。見捨てよ」といいきれるだけの人間がジャーナリストであり、危険と隣り合わせの戦場へゆく権利があるのである。そういった手当てをせずに、ただ単に売名衝動に突き動かされて危険地帯に入りこみ、危機に陥れば政府に助けてもらおうなどという輩は、単なる野次馬といっていい。
 でもそんな心配はいらなかった。脳天気ジャーナリストは舌の根も乾かないうちに、迎えに行った家族とともに今日にも日本に帰国するのだそうだ。なんのこっちゃ。
 脳天気ぼっちゃんについては、未成年なので武士の情けでなにも言わないでおこう。
(「祝!生還、だから糾弾 その2」に続く)