朝日の紙面は楽し

 7月に入った。愛知県はほぼ空梅雨。寝室の西側の窓を開けてあるのだが、そこから忍び込んでくる空気はひんやりしている。日中は暑くてもしかたないが、夜涼しいのは寝苦しくなくてありがたい。

 それにしても朝日新聞は矛と盾を紙面にならべて平然としている。ある意味すごいな。
 まず今日の社会面である。「制服向上委員会」の15歳の少女を登場させて《AKB48の話に熱中したり、お弁当のおかずがいつもより一品少なくて落ち込んだり……そんな「愛すべき男子たち」がヘルメットをかぶって戦うかもしれないんですね。》《ちゃんと外国と付き合い、男子たちが血を流すなんてことはしないでほしい。》などと言わせている。
 少女よ、世界が日本ばかりならいいけれど、現実は違うんだ。独裁破綻国家の北朝鮮もあれば覇権主義を鮮明にしている支那中国もある。ロシアだって帝国の方向へ転換を図っている。日本の周辺はきな臭い国家が群れていると思ったほうがいい。つまり「ちゃんと付き合えない体制ばかり」ということなのである。
 そして、一旦ことが起これば、愛すべき男子ばかりではなく女子も戦場に行く。その覚悟が日本人にはない。戦争をするしないの前に、この脳天気さが日本人の病理なのである。普通の国の若者は、アイドルの話をしながらも、国を守るために銃を取る。当然、仕方なくではあるが、それは国民の義務なんですね。
 今度は国際面に目を移す。中ほどに、砂浜にびっしりと並べられた赤い十字架の写真がある。死んだアメリカ兵の墓を模したモニュメントを取り上げている。こっちだって集団的自衛権反対のための誘導記事なのだが、この記事は逆効果になるような気がする。イラク戦争で戦死したアメリカ兵は4000人をこえている。しかし、この戦争はブッシュが仕掛けた戦争だから、ある意味、アメリカの戦争である。しかし、日本周辺で起きる戦争は、日本とどこかの独裁国家の間に勃発するわけで、そこにはたしてこれだけの犠牲を払ってでもアメリカが参戦してくれるだろうか。記事は「米市民、戦争に嫌気」とある。「米国民」としないところが朝日新聞のいやらしいところなのだが、ここではおいておく。4000人という戦死者を突き付けられれば、戦争に若者を行かせたくないと思うのは当然だろう。
 とすると、日本はアメリカの支援を期待せずに日本人だけで暴走国家と対峙するということになる。話し合いなんてできない「ちゃんと付き合えない体制」ばかりである。そうなった時、日本人の覚悟が問われるのではないだろうか。
 
 朝刊をくつろげて、そんなことを考えた。ふと西の窓を見上げると、そこから見える空は青い。今日も暑くなりそうだ。