平仮名市名について その2

 ひらがなの問題点は、要するに意味が読み取れないということである。茨城県ひたちなか市、「日立那珂」なのか、「日田?知名か?」なのか、「屁断ち中」なのか分からない。暴走族じゃないので「匪蛇血難禍」ではないだろう。
 面白いのでもうひとつ。三重県いなべ市、もとは員弁郡の「員弁」なのだが、ひらがなにしたので、「猪鍋」なのか「否べー」なのか「胃難屁」なのか分からない。「員弁」という地名は「河北」より古く、その由来は日本書紀雄略天皇18年までさかのぼる。申し訳ないが、小さな自治体同士の勢力争いや面子ごときのチンケな理由で改称したり失ったりしていいものではない。よほど歴史に無知か日本文化が嫌いな人間がネーミングに関わったとしか思えない。
 司馬遼太郎名古屋市緑区について述べた文章がある。
「昭和38年、旧鳴海町一円がそのまま区になった。丘陵、田園、叢林が多く、区名はその景観からつけられた。と思っていたが、じつはそうではなく、芭蕉が貞享5年(1688)、この鳴海の宿で詠んだ句『はつ秋や海も青田も一(ひと)みどり』からとられたという説がある。(中略)海を見、野を見、さらに海を見て、色面の境目もなく一みどりである、というのは、大景観として鳴海をとらえて、言い尽くしている。緑区の区名がもしこの句に由来するとすれば、市政関係者の感覚はなみなみではない」
 そこに住む住民の故郷の呼称である。もう少し文化的に、頭を使って考えようよ。