遠花火鈴木主水の屋敷跡

「とおはなびすずきもんどのやしきあと」

 世界的な映画監督の小津安二郎の俳句である。松岡ひでたか『小津安二郎の俳句』(河出書房新社)から引く。

 季語は「花火」。時分は1ヶ月ほど前である。7月中頃に、青山に遊んだ時に詠んだものらしい。歌舞伎にもなった心中事件の主人公が鈴木主水である。この句は小津の代表句のひとつと評価されている。著者の言を引く。

《視界の手前にあるのは鈴木主水の屋敷跡。その遠景に花火が大きく開いている。景も単純化されているし、表現にも無駄がない。無駄がないということは、季語のはたらき妨げるものがない、ということでもある。》

 なるほど。

 

 ワシャは俳句が好きだけど、あまり鑑賞力がないので、「プレバト」を見ていても、夏井いつき先生が「これはいい句だ」と勧める作品が、なかなか腹に落ちてこない。句を詠んでも、その情景が脳裏に浮かばないのである。

 東国原英夫さんの「花震う富士山火山性微動」も、解説を聴けば、「ああそうか」と納得はするけれど、きめ細かくいろいろな情報が織り込まれているんだなぁとも思うけれども、ワシャは単純なほうが理解しやすい。

 東国原さんなら、「草茂る洞窟のこと他言せず」のほうがワシャの好みだね。

 

「花火」の句と言えばこれがいい。

 

「間断の 音なき空に 星花火」

 

 海童こと、夏目雅子の句。