「雰囲気だせや」

 見出しの言葉に近いニュアンスを持つものに、「誠意を見せろや」というものがある。これはヤクザが素人を脅す常套句で、要は「金を出せ」というと恐喝になってしまうので、「金」を「誠意」に言い換えているだけ。

 自民党のほうの「雰囲気」もまったく同じ使い方で議員たちが使っているそうだ。

 ヤクザ組織と自民党の類似性を書こうと思ったら、このニュースに先を越された。

《裏金問題で自見大臣が派閥退会届、二階俊博会長が激怒!〈派閥という名のヤクザ組織〉とSNS震撼》

https://news.yahoo.co.jp/articles/e42089c142d988ba35da48cdbd4196d94e826d2d

《〈いやはや、山口組以上ではないか〉〈派閥という名のヤクザ組織〉――。こんな声がネット上では飛び交っている。自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部から事務所が家宅捜索を受けた「二階派」(志師会)のことだ。》

《「大臣になりたい時は『ワンワン』と言っておいて。礼儀を知らない」。小泉氏退会のタイミングで、自見氏の派閥離脱の意向が報じられると、二階氏は周囲に言い放った。「派閥の同志がおって、どれだけ助かっているのか」「『大臣はそのまま、派閥は離脱』はおかしい」。二階氏の怒りは収まる様子がなかった》

 二階組長が激怒したんですと。

 ちょっと言い回しがヘンだけどね(笑)。「『クンクン』と鼻を擦り付けてきた」と言いたかったのだろう。組長、パンダは呼べても、喋りについてはあまり頭が回んない。下手な前座より下手だ。

「大臣になりたいときは雰囲気をつくって鼻を擦り付けてきたのに、雰囲気の話が表に出た途端、派閥を離脱しようなんざ言語道断、あれだけ作ってやった雰囲気を返してから出ていけ」

 てなことを言いたかったんでしょう。

 名古屋市の河村市長が「自民党と雰囲気(裏金)」についてこう看破している。

「『自民党と裏金』というのは『日本人と日本語』のようなもの。切っても切れない」

 ある意味、必須のコミュニケーションツールということか。

 河村市長の活躍する地方政治では、立候補しようとする人間が、地元自民県連の有力者に「私を公認してください」と頼みにいく。そうすると「もうちょっと雰囲気を出してくれないとね」と答えるんだそうな。

「あんたを候補者にっていう雰囲気が出てこないんだよね。雰囲気出せる?」

「雰囲気出します!」

 てなことで「雰囲気」と称する裏金が飛び交うことになる。

 イスラム研究家の飯山陽先生はこう言っている。

「途上国というのは政治が腐敗している。金がなければ誰も動かない。だから裏金が蔓延している。支配者が国に入る金を独占して、それをばらまいて地位を維持する。イラクなどを見れば一目瞭然で、産油国なのでお金は入ってくるが、イラクの公民は飲む水もないという状況。国の収入は一部の人間に独占され、国民には回らないので発展しない。これが途上国のテーゼである」

 え?まさに自民党政治じゃん。裏金がパーティー券として売られ、そのキックバックが雰囲気(裏金)として自民党の中で還流しているだけ。

 大臣になるためには雰囲気(裏金)が必要で、雰囲気を壊そうとすると組長から激怒される。下手をすると政治生命を絶たれる。

 昨日、書いた三木武吉が極めて金にはきれいな政治家だった。金に汚い河野太郎の祖父河野一郎三木武吉をこう評している。

「先生の金の使い方は実に綺麗(中略)私欲のない高名な心がなくては出来ることではない。だから政治上では大胆勇敢に戦えたのだと思う」

 三木武吉が亡くなった後、三木家にほとんど金が残っていなかった。どこからもせびらず、自らの預貯金、妻や眷属の財産まで動員して日本のために働いた。戦前、この人は大政翼賛会にも抵抗した気骨のある政治家だった。

 その人が命を賭けて作り上げた自由民主党を、雰囲気の党にしてしまった愚者どもの責任は大きい。

 寛政の改革を実行した白河藩主の松平定信がこう言っている。

「隠すと申すは、潔白ならぬ事より起り候、この方は腸(はらわた)を出して、政事を致す心底に候」

 自民党の先生方、腸が出ていないぞ~。