デビッド・マッカラム

《「NCIS」ダッキー役デヴィッド・マッカラムさん死去 90歳》

https://news.yahoo.co.jp/articles/e5e28778f9ea5329e14077be1de579d4d6eac4ef

 俳優のデビッド・マッカラムさんが亡くなられた。記事では「デヴィッド」と記載されているが、ワシャは昔ながらの「デビッド」でいく。

 テレビドラマの「0011ナポレオン・ソロ」のイリヤ役は童顔で憎めないキャラクターだった。それよりもワシャ的に印象に残っているのが、『大脱走』のアシュレー少佐である。

大脱走』自体は、豪華オールスターで創られていて、主人公はオートバイでドイツの平原を疾走するヒルツ大尉(スティーブ・マックイーン)や、ビッグXと言われる脱走の首謀者バートレット少佐(リチャード・アッテンボロー)なのだが、彼らも全「大脱走」という大計画の一部をしめるパーツでしかない。しかしそのパーツがそれぞれのパートで全体を壊さぬ程度に自己主張をして『大脱走』を名作に仕上げている。

 その中でも「土処理屋」のアシュレー少佐はユニークだった。雄弁な人ではなかったが、脱走用トンネルから出る土の処理を一手に引き受けたのが彼で、実にユニークな方法で膨大な土を消していく。

 アシュレーの見事な仕事に、当時、小学生だったワシャは、映画館の闇の中で思わず「わあ!」と声を上げてしまったほどだ。あの時に「工夫する」ということを教えてもらった気がする。

 アシュレー少佐の最期はまた壮烈だった。トンネルをくぐって収容所から外に出て、それぞれが分散してドイツ軍の後方かく乱をする。2人でチームを組む脱走組もいれば、単独行動で逃げ回る猛者もいる。親友のアイブスを収容所内で失ってしまったヒルツは単独行動である。自転車を盗んで、ひょうひょうと国境へ向かうセジウィック中尉(ジェームス・コバーン)も格好良かったなぁ。身を隠したり、周囲をうかがったり、脱走兵につきもののおどおどしたところを微塵も感じさせず、のんびりと独り自転車を漕ぐ。セジウィック中尉の後ろ姿に小学生のガキは人生を見た。

 そして、アシュレー少佐である。彼は収容所内では物静かな思索者であった。ただひたすら「土の処理」を考えていた。しかし、一旦、収容所から外へ出ると彼は一変する。彼は単独行であった。だが、電車の遅れなどで、脱走兵たちが、その電車に固まってしまった。アシュレーが車両を見渡せば、そこここに衣装を替えた仲間がいた。

 そして到着駅での検閲である。バートレット少佐と仲間が疑られていることを確認すると、わざと大騒ぎを起こして、検閲の目を引き付け、バートレットらの脱走を手助けする。ただ、その場でアシュレーは射殺されるのだった。命を賭して、仲間を助ける・・・童顔の物静かな青年の生き様を見せられて、ワルシャワ少年は唾をのみ込んだものである。アシュレー、黙って列に並んでいれば命を奪われることはなかったろう。でも、彼は決然と友を救う行動に走る。この時、「命より大切なものがある」ということを学んだような気がする。

 登場人物に「漢」しか出てこない映画だった。そして、この映画で少年は「漢」を学んで、終生、『大脱走』の脱走兵のような生き様をしようと映画館の暗闇の中で誓ったのだった。