昨日の「そこまで言って委員会SP」は「世にも奇妙なニュース’23真夏の特別編」と題して、最近巷で話題になっている何とも奇妙なニュースについて、徹底分析、徹底討論していくという企画。ネタに挙げられたのは「蛙化現象」「マイナンバーカード」「ジャングルからの奇跡の生還」「すすきの頭部切断事件」「AIグラビア、AIインフルエンサー」などである。
まぁどれも「討論バラエティー」のテーマとしてはおもしろく、先日、講演会をお聴きした門田隆将さんやネット配信で馴染みのある竹田恒泰さん、須田のオジキなどの微妙に過激な発言に笑わせてもらった。
ただ、やはり田嶋陽子氏のように、自分の思い込みだけを捲し立てるパネルストには疲れるだけだ。
今回は古舘伊知郎氏が、前列最上座の「ざこば席」で参加している。この人の言うことも、田嶋氏と同様でそれほど重要な情報は含まれていないので、聞き流していたら、「おや?」と思う発言があったので記しておきたい。
「マイナンバーカード」の時に、やおら発言を始めた。
「やっぱり移民大国になると舵を切ったんだったら、そういうことが狙いですとはっきり言わないということにムカつくんですよ」
こういった後にである。
論語の泰伯第八「民は之を由ら使む可し 之を知ら使む可からず」を引用して、
「お上の言うことに沿ってくれれば、細かいことは知らなくていいですよ・・・という態度が気に食わない」
と強弁していた。
ううむ、古舘氏、痛いのう。これが「小人」、「電波芸人」の典型と言える。浅薄な知識をテレビで開陳しているが、これって人ごみでコートの前を広げて開チンしているのと同様で、とても恥ずかしい。
例えば、ベストセラーの金谷治先生の『論語』(岩波文庫)には、そんなニュアンスでは書かれていない。
「人民は従わせることはできるが、その理由を知らせることはむつかしい」
「知らせるな」ではなく「周知することはむつかしい」という意味なのである。
古舘氏、居酒屋で話しているならその程度の知識でもいいけれど、公共の電波を使ってモノを言うなら、もう少し勉強しろよ。
東洋史家の宮崎市定先生の『現代語訳論語』(岩波現代文庫)ではこうなっている。
「大衆からは、その政治に対する信頼をかちえることはできるが、そのひとりひとりに政治の内容を知ってもらうことはむつかしい」
古舘氏のニュアンスはどこにもない。
現在の論語のオーソリティー、加地伸行先生の解釈を見てみよう。
「人々に対して、政策に従わせることはできるが、政策(の意義・目的など)を理解させるとなると、なかなかできない」
為政者側が「どうすれば民に対して政策の内容を伝えることができるのだろう。それは実に難しいことだ」というどちらかと言えば民を思いやった言葉なのである。
今、ちょうど論語を勉強し直していましてね、古舘氏の発言がツボにはまったのでした(笑)。