お能は楽し

 昨日、午前中は小さい友達の付き合いで、おもちゃ屋スマホショップを梯子した。午後は名古屋へ出た。人間国宝能楽師、大槻文蔵さんが主宰する清韻会が開催されるからである。

 JRで名古屋金山まで出て、地下鉄に乗り換えて名古屋城駅まで。土曜日だから混んでいるかと思いきや、JRも地下鉄も運よく座れたのでありがたかった。

 地下鉄駅北の7番出口から地上に上がれば、名古屋城の南を東西に走る「出来町通」に出る。ワシャはこの通りを歩くのが好きなんです。おそらく名古屋市内の道の中で一番気に入っているかも。

 7番を上がると、小さな公園になっていて、ベンチも置いてある。なによりも鬱蒼とした木々の枝、葉のおかげで炎天下でも日陰をつくってくれている。そこから広い歩道に出ると右手には名古屋城二の丸の石垣と空堀が見える。出来町通には、どうだろう、名古屋の道の中では最も樹木が多く、太いものにいたっては樹齢何百年というものが珍しくない。その木々を愛でながら、名古屋城の石垣を楽しみながらの散策は楽しい。どてっ腹に無味乾燥なエレベーター棟をくっつけている天守閣なんてどうでもいいのじゃ。戦国時代からの風合いをそのまま保っている堀、石垣を見て回る方が歴史好きにはたまりません。だから能楽堂までの800mなんてあっという間だった。

 さて、今日の楽しみはワシャの知人の舞う能の「三笑(さんしょう)」である。この曲目、もとは「虎渓三笑」という支那の古典からきている。画題として有名で、これは曽我蕭白の手によるもの。

http://www.iwanami-art.jp/knowledge/trad/kokeisansho

 能としては「四番目物」、いわゆる神、修羅、鬘物(女性)に分類されぬ「雑能」の中に入ってくる。死霊、怨霊、亡霊などが出てくるものと違って、この「三笑」は、修行中の慧遠禅師のもとへ、友人の陶淵明と陸修静が訪ねてきて、旧交を温めるというもので、最後は話がつきず、楽しく議論をしていて、修行中は決して渡らないと誓いを立てた虎渓にかかる橋を渡ってしまい、三人で大笑いをするというまことに楽し気な能となっている。本来なら阿古父尉面(あこぶじょうめん)

https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/384187

などをつけ、能装束をまとって舞うのだが、今回は直面での袴能となった。それでも、「三笑」の雰囲気は大いに伝わってきた。地謡(じうたい)、囃子(はやし)、舞台の設えなどはすべて本番そのもので、久々の小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)の拍子は、やっぱりライブですね。

 

 おぉ~~スコーン

 いやぁ~~ポン

 おぉ~~ポン

 いやぁ~~~~スコーン

 

 ライブ感が伝わりましたか(笑)。これって室町時代の音楽劇であり、歴史文化に身を委ね、囃子を聴いているとホントに気持ちが洗われます。とくにこの「三笑」は、禅画の要素も多分にあるので、禅宗に帰依しているワシャ的にはベストマッチと言っていいものだった。あ~おもしろかった。スコーン。

 

 能舞台のあとは、久しぶりだったので、名古屋城界隈を散策したのでした。