伝統的なぼったくり

 もちろん、「ぼったくりバー」があることは周知のことで、夜の水の世界では、その手の「悪」の種は尽きねえ七里が浜。

 それにしてもこれほど典型的な「ぼったくりバー」の事件がニュースになるとは、「まだこういう手口を使っているんだ」と苦笑してしまった。

《20歳女が「ぼったくりバー」連れ込み “5000円”のはずが40万円請求 「マッチングアプリ」で知り合い》

https://news.yahoo.co.jp/articles/abf2066fc24274353c0935d53c6651f2b593c5c8

 まぁ「マッチングアプリ」てなところが今時なんですがね。

ちばてつやさんの作品に「のたりの松太郎」という相撲漫画があった。坂口松太郎という破格の、ハチャメチャな力士の物語で、ワシャは全36巻を愛蔵している。

 その中に「ぼったくりバー」の話があったんですね。

相撲の巡業が福岡に行った時、不真面目な松太郎は、巡業の夜に付き人の辻くんを連れて、繁華街のなじみの居酒屋を訪ねた。ところがあいにく定休日だったので、ほかの店を物色することになる。そこに、ミニスカートをはいた女があらわれて「飲みに行かない?」と誘うのだった。松太郎は「金がない」というと「飲み放題で5000円」と言う。「だったら行こう」ということになり、松太郎と辻は、女に誘われて「クイーン」というバーに入っていくのだった。

 この話は、全36巻の中でも面白さで一番だと思っている。とても愉快な話なんで、もう少し喋っちゃうと、バーにはもっともらしい老マスターとママが待っていて、「何を飲んでもいい」ということで、松太郎は高級洋酒をぐびぐびと飲み始める。そのうち松太郎たちを誘った女が消え、代わりにいかにもそれっぽい男たちが3人入ってくる。

 しこたま高級酒を飲み、カウンターに5000円札を置いて店を出ようとすると、「ちょっと待った」がかかって、席料、おしぼり代、氷代などを合わせて80万円の請求が出る。

 そんなものが破格でハチャメチャな松太郎に通用するわけもなく、付き人の辻もテコンドウの達人ときたもんだ。さあて、「ぼったくりバー」と3人のやくざ者の運命やいかに?

 まぁ現実には、松太郎のような客はキャッチしない。キャッチする女たちだって、人を見るのだ。引っかけるなら普通の人よりも気弱そうな、金を持っていそうな男を物色するわさ。

 ワシャもね、都会の繁華街に行くことがあるんだけど、そうすると客引きにちょくちょく出くわすんですね。こんなに気弱い男なんだけど、声をかけられたことがない。金を持っていそうもないからかなぁ(自嘲)。