ちょいと前のことなんですがね、立川志の輔の落語会に行ってきたんでございます。
師匠、のっけは「竹の子」を出してきた。
ウクライナの情勢をまくらに持ってきて「争いごと」というのを客に想起させて、仲の悪い隣家の武士たちの噺にもっていく。 隣家の竹が塀をくぐってこちらの庭に筍を出した。それを家来が切り取って主人の食膳に出そうとしていると、主人は「貴公の筍が、当方の屋敷に無断で顔を出したので、無礼千万と手打ちにした」と嫌味を言ってこいと家来に指示を出す。 家来は嫌々そう口上を述べるが、相手の武士もしたたかで、「それはごもっとも。しかし当方の屋敷で生まれたやつゆえ不憫におもうので、死骸を当方におさげ渡し願いたい」ときたもんだ。 これに対して「死骸についてはこちらで『おニャか』に葬ったのでご懸念には及ばぬ」と応じる。
「『おニャか』?お墓でござるか?」
「いやいや、『おニャか』・・・『おなか』でござるよ」
というようなばかばかしい争いが続く。
この噺の冒頭で、志の輔はウクライナへ侵略をするロシヤに対して厳しく糾弾するも、その中で「落語を聴きなさいよ」と言う。「落語を聴けば、争いごとがいかにばかばかしいものかよく解る」とも言った。
志の輔は、見事にそのバカらしさを高座で見せてくれた。プーチンよ、落語を見ろ!お前のやっていることは、このマヌケな侍と同じことをやっている。罪なのは、この侍たちの犠牲になったのは筍だが、お前のバカは、多くのウクライナ人の大切な命を奪い、世界経済を危機に落とすという人類史の中でも特筆すべきバカをやっていることなのだ。そのバカさ加減は、ヒトラーもスターリンも毛沢東も超えているぞ。こんなバカ元首は見たことがない。与太郎のほうがよほど利口だ。
5階建て13戸が入所するマンションの役員会。議題はエレベーターに防犯カメラを付けるかどうか……。これがバカバカしくて今のコミュニティーを象徴していて笑えるんですね。
中入り前のトリは講談でご機嫌をうかがう。神田京子が「金子みすゞ―明るい方へ―」をやった。これは、詩人の金子みすゞの詩を散りばめた朗読劇で、講談調ではあるが講談ではなかった。ここは歴とした大ネタをやって欲しかったなぁ。
後半戦の最初が長唄の松永鉄九郎。重要無形文化財「長唄」総合認定保持者で、いい長唄三味線を聞かせてもらった。ワシャは基本的に揺らぎのある三味線音楽が大好きなんですね。
そして大トリが志の輔の「帯久」。これも争いごとの落語で、最終的に正直者が勝つという噺で、これもプーチンに聞かせてやりたい噺ですね。
「落語で世界平和を」、奥へ引っ込むときの志の輔師匠の背中がそう言っておりました。