落語会

 夕べ、地元で落語会。出演は幹事の瀧川鯉昇、真打ゲストが柳家花緑花緑の弟子の花いち、緑助(ろくすけ)。

 まずは前座の緑助が「やかん」を掛ける。知ったかぶりの旦那に、八五郎がいろいろな質問をする。「土瓶は土でつくった瓶だから土瓶、鉄瓶は鉄でつくったから鉄瓶、やかんは矢が飛んで来てカーン……」てな噺ですな。
 緑助、なかなか上手い。途中で講談を入れたりして、けっこう噺も凝っていた。こいつはゆくゆく化けるかもしれねぇな。ちょいと注目をしとこう。
 花いちは二つ目だ。演目は「だくだく」だ。噺の発端は、貧乏人の八五郎が、家財道具がなにもないので絵の先生にタンスや金庫などを壁に描いてもらう。そこに近眼の泥棒がやってきて一騒動を起こす……というややナンセンスな噺。
 そして鯉昇である。鯉昇、「千早振る」を持ってきた。在原業平の和歌「千早ぶる神代もきかず龍田川、唐紅に水くくるとは」を適当に解釈をするという、これも知ったかぶりの噺。通常の噺は、「龍田川という力士が、吉原で千早という花魁に袖にされ、その妹分の神尾にも振られて、意気消沈して故郷にもどって豆腐屋を始める。そこに落剝した千早がやってきて物乞いをする。オカラを与えようとした龍田川だったが、物乞いが千早であったので、昔の恨みでオカラはやらず、ドンと張り手をくらわす。そのことで世をはかなんだ千早は庭の井戸に身を投げて死んだのだった。
「千早が振る」、「神尾」も言うことを「きかず」、「龍田川」ときたもんだ。オ「カラ」を「くれない」ので、悲観した千早は井戸に身を投げて、「水」を「くぐる」ときたもんだ。オチは「先生、それでだいたい分かりましたがね、最後の『とは』ってえのはなんですか?」と無学な男が尋ねると「『とは』というのは千早の本名だ」と言って、おあとがよろしいようで、となる。
 ところが、鯉昇の「千早振る」はまったく違う。龍田川が相撲取りであるところは同じだが、モンゴル出身の力士という設定になっている。それが南千住の外国人専用のクラブで、ナンバー1の千早ちゃんに振られるという発端である。そしてナンバー2の神尾ちゃんにも振られて、そのショックで力士をやめてモンゴルにもどる。草原のパオで豆腐屋をやっている両親の後を継いだのである。何年かして、草原の向こうからフタコブラクダがやってくる。それは落剝した千早と味噌樽だった。やはりモンゴルでも千早はオカラを恵んでくれといい、龍田川はそれを拒み、ド〜ンと突く。それがあまりにも強烈だったので千早は草原の彼方に飛んでいってしまった。千早はヒマラヤを越えて、ネパールまで飛ばされて……なんていう荒唐無稽のとんでもないバカ噺に落語会に詰めかけた客は大爆笑をしたのだった。
 鯉昇のあとでは花緑もやりにくかろく。ネタは「笠碁」である。小さんのお家芸と言っていいネタで、お店の前を通りかかる碁がたきを目で追うところが見せ場なのだが、う〜ん、でもやっぱり小さんの方が上手いなぁ。小さんと比べちゃいけねえか。でも、丁寧な落語をするいい噺家だ。まだ40代後半なのでこれからの成長を期待しよう。同じサラブレットでも正蔵や三平よりモノが良さそうだ。

 それにしても昨日の落語会ではケータイの始末が悪かった。ジーサンが何度も鳴らしていたし、バーサンはケータイが鳴ってトイレに飛び込んで、そこで大声で話をしているのが筒抜けだった。落語の人気が上がってきて、そういう阿呆も紛れ込むようになったか。花緑はそんな邪魔者にも動じず見ごとに「笠碁」を噺しきった。ご苦労様。