永遠の前のほんの一瞬

 昨日、NHKのBSで「探検!恐竜博物館」というのをやっていた。福井県立恐竜博物館に取材したもので、近所の4歳の友だちと一緒に見たのじゃ。

 ワシャは一時期、博物館で仕事をしていたので、そういった施設のバックヤードとか作業過程・展示工程などは、概ね知っているつもりだ。それは研究対象が恐竜であろうと火焔土器であろうと弥生の遺物であろうと保管状態は類似したものとなる。だから、写り込む作業部屋や収蔵スペースなどが懐かしく、どこの博物館にもある発掘現場から出たものを入れたケースが何段にも積まれ、所狭しと並べられた風景は20年前の博物館勤務の頃を彷彿とさせてくれた。

 そんなことはどうでもいい。その番組の中で小さな化石が紹介されたのである。それは2億2000万年前の哺乳類のものであった。その石は研究員の手のひらに収まるほどの大きさで、骨は細く儚げである。これが人類を含めた哺乳類の祖先で、当時、全盛をきわめていた恐竜たちの足元で逃げ惑うようにしてはかなく生きていた。その祖先が踏みつぶされることなく生き延びてくれたおかげで、その2億2000万年の末端に、ネズミやイタチやプーチンとともに人類が存在しているんだなぁ・・・と思った。

 令和元年(2019)8月発行の新潮社のPR雑誌「波」に曽野綾子さんの連載にこんなことが書いてあった。

《私はカトリック系の学校に幼稚園の時に入れられたので、ごく幼い時から、先生の修道女たちが「私たちは、永遠の前の一瞬を生きているにすぎません」「この世は、ほんのちょっとした旅路なのです」と言うのを聞いて育った。私もけっこう反抗的な生徒だったが、修道女たちのその「呟き」が間違いだったと思ったことはない。》

 間違いどころか科学的にも修道女の言うとおりで、人の一生が100年としても、2億2000万分の100ですからホンの一瞬と言ってよく、その100年のあとにどれほど長い歳月が横たわっているか。もう長さという物差しでは計れない「永遠」があるわけで、ここを踏みちがえてはいけない。

 とくにプーチン。せいぜい生きてもあと30年であろう。ロシヤ人男性の平均寿命は短いから、もっと時間は限られてくる。テメエの滅亡、ロシヤの存続が危ぶまれたら、核兵器も辞さないようなことを口走っているが、プーが生きる年数なんて「一瞬」なんだということを、ロシヤ正教の総主教のオッサンよ、いかにもいかがわしそうなオッサンだが、そこは総主教だろうが、せめて修道女なみにプーに大切なことを教えておけよ。

 ロシヤが滅亡するなら、世界を道連れにして、核攻撃をすることをプーは臭わせている。大惨事世界大戦、核戦争が起きたとして、多くの人類が死滅するかも知れないし、地球自体が甚大な悪影響を受けるだろう。しかし、小さな哺乳動物が恐竜世界を生き残ったように、その恐竜を絶滅させた大災厄をもしのいで、その後の大繁栄をしてきたように、哺乳類の人類は強かで、必ずや放射能に汚染された地球を生き延びていく。

 プーの人生など一瞬だ。しかし、虎は死して皮を残すではないけれど、その事績は後世に長く語り継がれていく。それこそ100年では済まない。人類史が続く限り、何千年とプーの悪逆は辱め続けられることだろう。後世に残す名を、名誉を重んじよ。

 蛇足になるけれど、作家の東良美季さんがNHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」についてこんなことを書いている。

 《日本とアメリカ、国と国がもう一度「仲良く」なるために必要なのは、思想でも法律でも条約でも、主義主張でもなかった。いくら理論武装してみても、無慈悲な殺戮が繰り返された記憶は、そんな理想をひとたまりもなく吹き飛ばしてしまう。だから作者の藤本有紀(脚本)はもっと揺るぎないもの、お互いの国で長い年月をかけて培われてきたものを用意したのだと思う。それは文化だ。アメリカのジャズ、そして日本の時代劇である。》

 ここが重要ね。

《文化とは人が頭で考える思想や信条、敵意や嫌悪感さえも超えて、人々の血と肉の中にすら入り込んで生き続けるものだ。》

 そしてこう説明する。

《だから少女時代に「I hate you.」と言ったるい(深津絵里)もやがて錠一郎(オダギリジョー)と出会うことによって、幼い頃聴いていたルイ・アームストロングの名曲「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ストリート(On the Sunny Side of the Street)」を、優しい記憶として取り戻す。》

「カムカムエブリバディ」、近年まれにみる名作だった。それは東良さんも言っていて、シナリオとして非常に緻密に紡いであって、布石を巧く置き、エピソード同士の連関も実に絶妙だ。こういうシナリオが読みたいなぁ。

 しかし今の日本政府はシナリオライターがよろしくない。出演者がよくないのだからせめてシナリオをしっかりと作り込んでおかなくっちゃダメだ。

 岸田さん、総理大臣をやるっていってもせいぜい数年ですぜ。一瞬どころか「イッ」くらいな時間を恥ずかしくないように生きなさいよ。