光陰矢のごとし

 昨日、ゴールデンウィーク中でも最高のお出かけ日和だった。なんだけど、ワシャは真面目だから、自粛して遠出はしなかったのじゃ。自宅で、6月に開かれる会議の準備をせっせとしていた。まぁ作業はもっぱら原稿書きなんだけどね。それに厭きると壊れた樋の修理したり、掃除をしたりして、結構ごそごそと忙しかった。

 午後からは会議の時にパネルにして使う地図を作っていたんだけど、2か所、確認していない場所が見つかった。現場を見ずして話すことはできない。だから夕方、流星号に乗って、市街地の南の現場に走ったのだった。

 いやーぁいい天気ですな~。風がおとなしく心地よい。おかげでペダルが軽く、自転車が気持ちよく進んでいく。

 大きな信号にさしかかった。ちょうど信号が変わり、信号待ちになった。久しぶりに新しいスニーカーを履いていて(いつもは革靴ばっかりなんス)、ペダルから足を降ろしても、着地がスニーカーだから柔らかいんですね。

「ピヨピヨ・・・」という音が流れている。その間は渡れない。信号を睨んでいる必要もないので、新しいスニーカーに目を落としていた。

 そうしたらね、ちょっと細身のジーパンを履いていたし、スニーカーが結構若い感じなので、ふっと高校時代のことを思い出した。

 ああ、そういえばこの交差点で、やっぱり自転車に乗っていて、信号待ちをしていたなぁ。

 そう思ったら、意識が高校生のころに戻ってしまった。

「これからの人生、何をしようかなぁ・・・」

 瞬間にそう思ったのだ。そしてその思考に引きずられるように、

「〇〇をしようか、◇◇になるのもいいな、△△を極めるのもいいかも」

 と、前途洋々たる夢を脳裏に描いたのだった。30年あれば何事かが成せるはずだ。視線を上げれば、交差点の向こうの空に坂の上の雲が見えていた。

 その時、「ピヨピヨ」が止まって、反対側の音が鳴り始めた。「アッホーアッホーアッホー」で、現在に引き戻された。

 あらららら、〇〇にも、◇◇にもなれず、△△を極めることもできなかったオッサンが信号機の脇で自転車に跨っているのだった。

 でもね、オッサンの目には、まだ「坂の上の雲」が見えているのだった。