会議は踊る

 なんだか笑えるくらいに忙しい。早朝は午前6時前からパソコンに向かい、事務所を出たのは午後6時30分。帰宅途中に仕事の電話が3本あって、明日ある会議の打ち合わせを路上でする。帰宅後、メールに送られてきた文章を修正して、翌日の発言原稿を作成し終わったのが午後11時を回っていた。その作成中も、仕事とは別件で電話が入り、その対応だけでも2回30分を費やしている。

 そして今朝、仕事の方のメールを送り、「さて・・・」てな感じでこの日記を書いているわけです。

 

 昨日は、午前8時半には事務所に出勤し、そこから打ち合わせ、研修、打ち合わせ、研修、打ち合わせ、打ち合わせ、打ち合わせとまさに秒刻みでスケジュールが組まれていて、午後一番の研修は「ファシリテーション研修」とやらで、ワシャは現役の時に腐るほど、その手の研修を受けてきたし、東京で開催された大規模な研修会では、ファシリテーターを何度もやっていた。毎月やっている読書会だって、ファシリテーションの練習のようなもので、今さら、若い講師に教えてもらうことはない。

 そう思って、研修の幹事に「別の仕事がやりたいので」と申し出ると、幹事も、ワシャの経歴を知っているので「ですよね~」とかは言ってくれるのだが、なにしろ今の仕事が「団体行動」が大好きな団体なので、古参が「出席してもらいたい」ということで、末席に座ることとあいなった。

 もちろん、研修の内容は、すべて暗記しているくらいに熟知していて、ポストイットを使った議論のまとめ方、KJ法なんかはお手のもの。て言うか、ワシャは前職で、この手のことをやって給料をもらっていたのだ。今さら、ネーチャン講師から伝授いただくことはない。むしろ「あたし、ファシリテーター向きではないので~」と言いながら研修を進めるネーチャン講師より、ワシャが教壇に立った方が間違いなくためになるだろう。

 とはいえ、事務局が段取りしてくれたものを、邪魔するのも大人げないので、後方の席で一人パソコンをするのだった。あ~仕事が捗った。

 その後、ワシャらの控室に戻る。ワシャらの仲間は20名弱。そこで、ある書類についての打ち合わせをする。

 この書類についての責任は、先輩の役員とワシャであった。ワシャらは何日も前から、その書類の拡大コピーを控室のテーブルの上に提示して、「意見がある方は朱書きで訂正等をお願いします」とアナウンスしておいた。

 その期日が終わったので、その内容について確認したところ、若干の訂正がされていたので「それを参考にして幹事(先輩とワシャね)で修正させていただきます」と発言した。

 そうすると古参委員に「その書類を見ていない」と言い出すバカがいて、さらに書類を見もせずに「大きく修正すべきだ」というような屁理屈をこねまわし始めた。まじめな先輩は、しどろもどろになりかけていたので、ここは新参者のワシャの出番だと思って口をはさんだ。

「書類は何日も前からこのテーブル上に公表してあった。訂正以来も前回の打ち合わせの際に伝えてある。あなたが何も記載されなかったのは、その内容で了承したということ。それを最後になって『聞いていない』『見ていない』は言い掛かりというものだ」

 と、かなり強めのことを言ってしまった。

 それには、先輩も驚いたようで、古参委員とワシャの間を、先輩がとりなすような格好になった。全体の雰囲気も古参委員VSなまいきな新人委員をかたずを呑んで見守るといった風になっていることも理解できた。それでは、まとめようと必死の先輩に申し訳ないので、ここはうまくオチを着けることにした。

「それではさらに1日書類をテーブルの上に置いておきますので、意見のある方は『ポストイット』に書いて貼っておいてください」

ポストイット」の研修を受けたばかりだったので、控室のメンバーはワシャの混ぜっ返しにドッと沸いた。

 古参議員もさっきまでやっていた研修では、「ポストイット」の使い方に「うんうん」としきりにうなづいていた手前、「ポストイットを使え」と言われるとぐうの音も出なかったようだ。

 

 その後、別の打ち合わせ。テーマは会議の発言席におけるマスクの着用の可否だった。大きな会議室である。そこを30分に1回の換気をする。会議出席者はすべて、テレビでコメンテーターを仕切っているアクリル板で分けられている。さらに質問席はやはりアクリル板で前面、側面を覆う。その上でマスク着用で質問をするんだとさ。質問者の横、後方2mには誰もいない。前方に会社の役員が座っているが、距離は3m以上離れている。

 この状況でマスクを着用しろというのが理解できない。これもね、古参の委員が、飛沫対策に過敏になっているせいで、そりゃぁどれだけ対策をとっても心配でしょうよ。しかし、飛沫の飛散にしっかりとした海老定食はない。間違えた、エビデンスはない。つまりやってもやってもきりがない。一番いいのはそこにいる全員が息をしないことだ。

 どうも古参委員だけで物事を決めさせるとセンスのない方向に行ってしまう。これも、議論をつまらなくする要因と言っていい。やっぱりポストイットを使うしかないかね。