凸凹商事の笑い話

 ワシャは退職前に凸凹商事を去り、その後、凸凹の社外委員として復帰した。社外委員会は30人ほどいて、その中で、ワシャのグループは一応最大会派を形成しており、20人近い仲間がいる。

 その中にとても分かりやすいオバサン委員がいる。基本的に善人である。地域社会においては、真面目で、世話好き、働き者のオバサンであろう。

 それがワシャの先輩になる。その人の言動があきらかに先輩・同僚委員に対するものと、後輩(ワシャを含めて数人いる)に対するものを切り替えてくる。真面目な人だから、年功序列というのをしっかりと守って生きているんですね。ご苦労様。

 おおかたの後輩たちはほぼそれを当然のこととして受け入れている。だが、天邪鬼でヤンキーのワルシャワは一筋縄では扱えまへんで。

 ワシャはそもそも現役の社員だった。社外委員とはそれこそ30年来の交流があってね、社外委員室に歴代の委員長の写真が掲載してあるのだが(それもどうかと思うけど)、四半世紀前の伝説の委員長とも飲み屋で大激論をしたものである。その後、「おもしろいヤツ」という評価を受けて、その人にあちこち連れ回されたものである。そんなこともあってガキの頃から社外委員にはけっこう顔が利いた。おかげで生意気な社員になっちまいましたがね(笑)。そんな生意気なのが、昨日今日入ったようなオバサン委員に先輩風吹かされてたまりますかってんだ。

 ということで、1年くらい大人しくしていたのだが、このところいろいろな会議や打ち合わせで発言する機会があり、そのオバサンの意見をことごとくひっくり返してしまった。

 そりゃ善い人で真面目なだけじゃ、四半世紀にわたり仕事で、飲み屋で。ディベートを鍛えに鍛え抜いてきた手練れには勝てまへんでぇ。

 

 ワシャもよほどヘンな部類に入るのだが、新人委員の中に、これまた変わったのが紛れ込んでいる。こいつはとんでもない明後日のことばかりを口走るある意味で壊れたやつだった。よくこんなのが社外委員として席を確保しているなぁと感心する。

 これが、オバサン委員が筆頭を務める分科会に参加していた。ワシャも末席にいるのだが、なにしろつまらない分科会なので、いつもよそ事を考えることで時間を過ごしているんですな。

 ここで、新人の変わり者とオバサン委員が対立した。オバサン委員は、「私が先輩なんだから言うことをききなさい」というスタンスが見え見えで、変わり者は、それが理解できるくらいの知能は持っているので、どうしても反発をするんですね。

 分科会の意見を統一しなければならないオバサン委員は、ついに困って先輩委員の相談をした。そうしたらね、その先輩委員は「ワシャくんがいるじゃないか。かれに話を聞いてもらえば」と言われたそうな。その先輩は、ワシャの飲み友達なんですね(笑)。

 それでオバサンがワシャのところに相談に来た。「変わり者も含めて意見統一がしたい。しかし説得が難しい」ということだった。では、「一緒に話してみましょう」と切り出すと「とてもじゃないけれどそんな簡単なことではない。まったく言うことをきかないから」と、上から目線で言う。

 躊躇していても時間の無駄なので、早速、変わり者を会議室に呼んだ。もちろんオバサンが同席しているとことで、ワシャが話をしてみると「はいわかりました」で終わってしまった。オバサンは、目が点になっていた。

 世の中、そんなものである。組織に入っているからといって、年功序列にばかりこだわっていてもしかたがない。力のあるやつは力があるし、能力のあるやつは能力が高い。ワシャは年下でも、期数が下でも、有能な人間には一目も二目も置いている。

 オバサン委員、何度も火傷をしたので、そろそろ学習しただろうね。でも、熱い鍋は見た目は冷めているように見えるけど、実質は熱いままだから、これからも気を付けたほうがいい。