折り目

《塚田氏の忖度発言、強まる逆風 与党からも、くすぶる辞任論》

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6319377

 まぁ大した話ではない。軽率な政治家の口が緩んで、小さな自分を少しでも大きく見せようとありもしないことを捏造した、それだけのこと。この手の政治家は国会と言わず、全国津々浦々に蔓延しているのだから、ことさら驚くこともない。政治家のレベル(=有権者のレベル)の低さが露呈しただけである。

 とはいえ、突然に名前を出された安倍首相と麻生財務大臣はびっくりしただろう。そんなところで「忖度した」と言われてもねぇ。

 

 新潮社のPR誌の『波』をもらった。基本的にどこの書店に行ってもタダでくれる。レジカウンターの横あたりに積んであって「ご自由にどうぞ」ということになっている。

 でもね、この手のPR誌、なかなかバカにはできない。おもしろいものがはさまっていることが往々にしてある。2月号から始まった曽野綾子さんの「人間の義務について」は、このところ楽しみにしている連載だ。

 今月は「折り目正しさ」についてである。そこに登場するのが前述した麻生財務大臣の母上の和子さんであった。曽野さんは、和子さんとの交流があって、ときどきお話する機会があったという。和子さんといえば麻生さんのお母さんでもあるが、あの吉田茂首相のお嬢さんでもある。「日本では超一流の階級に生まれ育ち生涯を送られた方である」と前置きをして、曽野さん、この人となりをこう語った。

《しかし親しい中で喋る時は、そのような窮屈さを全く感じさせなかった。時には「べらんめえ調」の巻き舌で「そう言ってやりゃいいのよ」と言われるので、私はいつもほっとしたものである。》

 上流階級でも、中産階級の曽野さんあたりと「べらんめえべらんめえ」と話していたなんて、なんだかかわいいではありませんか。

 ただし「折り目」は正しい人だったと回想している。

《約束の時間が来ると、「では今日はこの辺で。本当にいろいろと恐れ入りました」とやや古風な言葉遣いで挨拶をされた。時間を引き伸ばすことも、だらしのない空気のままお開きにすることもなかった。》

 この折り目正しさが大切だと曽野さんは言っている。

 

 折り目のないのが、冒頭の塚田副大臣でしょうね。飲み屋ならいざしらず、麻生さんの地元の選挙応援に行って、このだらしない発言。折り目がついているどころか、折り目になるまえにほころんで半ば破れかかっている。これは困ったものだ。