秀吉はえらい!

 山川出版社の「詳細日本史」の記述を引く。
《秀吉の事業中で、後世にもっとも大きな影響をあたえたものは検地と刀狩である。(中略)有力農民のなかには、多くの下人をかかえ武器を所有して武士的な性格をもつものもいたが、秀吉は1588(天正16)年に刀狩令をだして、かれらのもつ武器を没収し、完全な農民とした。》
 だから秀吉以降、武器を携帯するものは、軍人か警察、それ以外は犯罪者と言うことになった。
 とくに戦後は(といっても文禄・慶長の役じゃないよん)、日教組(最近は「ひきょうぐみ」と読むのがトレンドらしい)の影響もあって、国民の武器へのアレルギーが強い。だからこんなコントのようなことが起きる。
《のぞみに「拳銃持った人」通報…実は私服警官、列車遅れ》
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181022-00000038-asahi-soci
 よほど大阪府警の警察官は人相がゴツかったんでしょうね。パンチパーマなんか当ててたりして(笑)。スーツも派手なストライプ柄ではなかったでしょうか。それが喫煙ルームでパカ〜スパ〜と白煙を吐いていれば「ヤクザか?」と思われても仕方がない。その上に脇のフォルダーがチラリと見えれば、素人は「ヤクザが拳銃を持っている!」と思ってしまう。目撃した人があわてて車掌に通報したのだろう。その後のJR東海の混乱ぶりを想像すると笑える。
《県警とJR東海によると、新大阪−京都駅間を走行中の午前8時35分ごろ、乗客がこの3人のうちの1人と3号車の喫煙ルーム付近ですれ違った際、拳銃を持っている「不審者」と勘違いして車掌に伝えたとみられる。車掌が様子を確認したところ不審な行動がなかったため、名古屋駅に到着するタイミングで110番したという。》
 午前8時35分ごろに不審者目撃情報を受けたにも関わらず、警察への通報はそれから55分も経過した名古屋到着時なんだね。記事にも《午前9時20分ごろ、東海道新幹線のぞみ114号(広島発東京行き)で「乗客から拳銃を持った人物がいると申告が寄せられた」とJR東海から110番があった。》と書いている。
 つまり車掌は(あるいはJRは)、不審者目撃情報を受けてすぐに警察に連絡したわけではないんだ。もちろん確認は必要だから、その時間を差っ引くとしても名古屋到着の30分前には警察へ通報できるだろう。そうすれば、名古屋駅に114号が入ってきて、すぐに警察が車両に乗り込むことが可能になる。ここからはシナリオ風に。

 防弾チョッキを着用し拳銃を構えた警察官が3号車の前後の扉から車内に飛び込む。
 ABC席で寛ぐ3人のスーツの男を前後から囲む。
愛知県警「(銃を構えて)ホールドアップ!」
 驚く大阪府警
愛知県警「身分証を提示しろ」
 あわてて内ポケットに手を突っ込む大阪府警
愛知県警「おっと、ゆっくりだ。ゆっくりと手を出すんだ」
 大阪府警、ゆっくりと内ポケットから警察手帳を出す。
愛知県警「な〜んだ、同業者の方ですか。出張ですか。そりゃまたご苦労さん」
 車両から出ていく愛知県警の警官たち。

 このシーンで1分もあれば充分である。今、実際に書庫の中で再現してみたから間違いない。
 なにを言いたいかというと、記事の最後にある《この影響で、同列車を含む上り8本が最大36分遅れ、約9100人の乗客に影響した。》というのが引っ掛かりましてね。つまり、警察かヤクザかの確認作業だけでしょ。ものの1分もあれば済むわけだし、確認が済めばすぐに「のぞみ114号」は発車すればせいぜい1〜2分の遅れですむ話ではなかったのかにゃ?と思った次第でヤンス。
 刀狩の徹底している日本国では、武器アレルギーの強固な日本国では、警察官が拳銃を持っているというだけで、公共交通機関が36分も遅れるほど平和な国なんだなぁ。やれやれ。