「但去莫復問、白雲無尽時」
「但(た)だ去れ 復(ま)た問うこと莫(な)かれ、白雲(はくうん)は尽くる時無からん」
「それでは行くがよい、もう何も問うまい。君の行く手には、清らかな白雲が、大空に尽きることなく漂っていることだろう」
唐の詩人、王維の送別の詩である。王維の言う「白雲」とは「世俗のけがれと絶縁した、清浄な生活を象徴的に表した言葉」らしいが、ワシャは司馬遼太郎の『坂の上の雲』の「白雲」を感じている。志をもって旅立つ馬鹿者の行く坂の先は、晴れ渡り、そこにぽっかり明るい雲が流れている。手が届きそうなくらいのところを、静かに流れていく。