春の仏

 う〜む、まったく何も浮かんでこない。つーか、ピーンとくるものがないんですね。すでに新聞はざっと見わたした。それにネットのニュースにも何かないかと探してみた。脳になんの像も結ばないまま、こんな状態ですでに40分程過ぎてまったわい。これはこまった。こまった時の『日本史歳時記三六六日』(小学館)である。
 おおお、今日は法隆寺夢殿秘仏特別開扉の日であったか。ヒントが出れば早いどー!早速、仏教の棚から『法隆寺国宝散歩』(講談社カルチャーブックス)、『もっと知りたい法隆寺の仏たち』(東京美術)などを引っぱってきて目を通す。

 法隆寺夢殿といえば久世観音様でしょう。岡倉天心が廃屋と化した夢殿の奥から見つけ出し九死に一生を得た仏様。キラキラと輝く左右対称の天冠や天衣が見どころである。またこの仏様は顔だちがいい。とても庶民的な面差しで、小学校時代にこんな顔の友人がいたような気がする。
 白鳳次代に作成された檜一木造りの聖観音立像もいい。久世観音の裏側に配置されている仏様で金剛の久世観音と木質の聖観音の対比がおもしろい。
 また久世観音の脇侍ともいえる行信僧都(ぎょうしんそうず)と道詮律師(どうせんりっし)の表情もリアルだ。釣り眼の行信、垂れ目の道詮……嗚呼、法隆寺の仏様に逢いてー!