夢の途中

 一昨日の明け方に夢を見た。
 どこかの市民会館のエントランスだった。アイプラザ豊橋の雰囲気があったなぁ。人もまばらなエントランスの壁際にそいつは立っていた。15年前に仕事先で死んだ悪友だった。もちろん悪友を見とめたワシャは「おい、おまえ生きていたのか?」と声を掛けた。悪友はニヤリと笑いながら、「ワルシャワ、大変そうだな」と応じてくる。

 おまえのほうが大変じゃないか。どのみちおまえなら地獄だろうが。
「地獄八景といってさ、見どころもあって、なかなかあの世もいいところだ」
 なにを負け惜しみ言っていやあがる。ところでなんで化けて出た。
「いやぁおまえのことがちょいと心配でさ」
 なにも心配なんか要らねェさ。
「そうかえ、ずいぶん無理をしているんじゃねえのかい」
 そう見えるか?
「おめえは昔っから意地っ張りで負けず嫌いだったからなぁ。なげえものには巻かれろってぇことをしねえから、生きるのが辛くなっちまうのサ」
 うっせえな!オレよりも15もわけえ面しやあがって、オッサンに偉そうに説経するんじゃねえ。
「そうよなぁ、オレはあれから歳をくわねえから……」
 うらやましいぜ。此岸はなかなかめんどくせぇぞ。それにさ、随分とジジイになった。
「ホントだ」
 ふふふふふ……。

 目を覚ますと涙が流れていた。全然、悲しくないんですがねぇ。やれやれ変な夢を見たもんじゃ。
 でもね、これは分析ができる。ワシャと悪友のシチュエーションだが、これはまるっきし「落語心中」の八雲と助六ですわ。そして、悪友の誕生日が4月4日だったので、ついこの間、「お、あいつの誕生日だな」と脳裏をよぎったところだった。そして、夢を見た前の晩に宴席があって、悪友と同じ苗字の人と話をしていて、話の途中で「悪友と同じ苗字だなぁ」と思ったのであった。
 ワシャの貧弱な脳味噌の中で、「落語心中」と「悪友の誕生日」と「たまたま同席した人の苗字」が三題噺になって夢で再構成されたんでしょう。