TPPの影響

 飲み会に行く前に少し時間があったので、やっぱり本屋に立ち寄る。立ち寄ると必然的に本を買う。店への入場料みたいなもんですな。
 藤波匠『「北の国から」で読む日本社会』(日本経済新聞出版社)。
 ワシャは倉本聰の大ファンである。その代表作の「北の国から」のシナリオ全10巻は、ワシャの後ろの棚に揃っていて、何回も何回も読んだ。テレビドラマも放送があるたびに視聴を欠かさない。名作である。
 この名作を、ドラマの背景となっている社会動向から分析してみる、というのがこの本の主テーマで、これがなかなかおもしろい。
 物語としての「北の国から」は、それこそ細かいセリフまで覚えている。五郎(父)と富良野にやってきた純(息子)が北海道の厳しさから東京の母のところに帰るという時に、親戚の爺さん(大滝秀治)の放った一言が印象深い。

「お前ら――。
 いいか――。
 敗けて逃げるンだぞ」

 もちろんこれだけでは何を言っているのかわかりませんよね。純にストレートに言っているわけではなくて、富良野から離農していった仲間の話をしていて、そいつらとの別れの時にそう告げたという話を語っている。
 こういったセリフは浮かんでくるんですが、その背景に1961年制定の農業基本法があったことは知らなかった。いや、農業基本法がそのあたりで制定されたことは知識として知っていた。しかし、「北の国から」のバックボーンにきちんと描かれていることには気づかなかった。なるほど……。それどころか、1980年から81年にかけてのドラマになる部分の30年も前からの時代背景が織り込まれている。倉本ドラマ、倉本シナリオ、畏るべし。

 昨日、買ってきてまだ半分しか読んでいないけれど、これはおもしろそうだ。そして、またこれで全10巻のシナリオの再読にはまりそうだ。気をつけなければいけないのは、書店の棚に「北の国から」のDVDシリーズが並んでいたことだ。そこに手を出し始めると……。

《TPP 米除く11カ国で署名》
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6274742
 また、これで日本の農業政策が動く。北海道でまた五郎やその仲間たちが影響をうけることになるだろう。そして悲喜こもごものドラマがいくつも生まれる。