袖すりあうも

 昨日、神奈川県に出張した。朝7時40分台の新幹線。三河安城で乗る客は少ない。ワシャと部下は4号車の後方のDEシートに座った。名古屋からの客もいるので、車内はそこそこ混んでいる。発車して間もなく、前方から金髪の若い女がバタバタとやって来た。ワシャの斜め前の空いているABCシートの横に立って、スマホで連絡を取り始める。要するに「空いている席があった」ということ。スマホを終えると金髪ネーチャンはABCシートをひっくり返す。そこにかなり明るめの茶髪ネーチャンが2歳くらいの子供を筆頭に、一番小さい子は生後6か月くらいかなぁ、みんなお揃いのモコモコの羊のパンツを履いた子供を連れて移動してきた。ワシャの斜め前の席は保育所のような状態になった。ひとつ後の席にいたサラリーマンは早々に逃げ出してしまった。ワシャは、最近、騒ぐ子供が気にならなくなって、文庫をおもむろに出すと、それをしっかり読みはじめるのだった。
 静岡を越えると車内はほぼ満席だ。そのあたりから保育所の一番小さいのがビービ―泣き出した。これはさすがにうるさかった。それでも周りの大人たちはなにも言わずに堪えている。ついに茶髪が乳飲み子を抱えて、デッキに出ていった。まぁそれもやむを得ぬ。
 ワシャは小田原で降りる。デッキのところまで行くと、やっぱり赤ん坊はむずがって泣いていた。通りがかった初老のオバサンが「たいへんねぇ、がんばってね」と声を掛けていた。茶髪は「ありがとうございます」と頭を下げていた。

 ワシャは仕事で神奈川県中部を走り回った。そして夕方、再び小田原に戻って、駅前で夕食を兼ねて居酒屋で軽く飲む。少し飲み足りなかったので、キオスクでビールを買いこんで、新幹線に飛び乗る。4号車だ。乗ってみて驚いた。またあの子供を4人連れたネーチャンたちが一角に座っていたのである。行きと違っているのは、ディズニーグッズがたくさんあったのと、子供たちが疲れて静かだったことくらいか。

 三河安城で下車したときに、金髪ネーチャンに「ディズニーランドに行ってきたんだね」と声を掛けると「はい!」と元気のいい返事が返ってきた。「行きの新幹線も一緒だったんだぜ」と言うと「そうなんですか」と答えた。「楽しかった?」ときくと、子供を抱え直して「はい!」とまた答えた。よかったね。オジサンは仕事だったけど。