司馬遼太郎ベスト10

 友達が首都圏で読書会を主催している。そこで司馬遼太郎を扱ってみるとのこと。「小説とエッセイ・評論・講演録などでいくつかいいものを教えてほしい」との依頼がきたので、あくまで私見ということで回答をした。

 小説のベスト10はこれだ。
1位『燃えよ剣
2位『花神
3位『国盗り物語
4位『播磨灘物語
5位『覇王の家』
6位『関ケ原
7位『竜馬がゆく
8位『翔ぶが如く
9位『坂の上の雲
10位『世に棲む日日』
10位『峠』

 個人個人でいろいろな好みもあると思うけれど、ワシャはなんといっても『燃えよ剣』である。匂い立つような土方歳三が格好いいし、彼が颯爽とゆく京の町がしっとりと描かれていて、読むと必ず京都に行きたくなってしまう。想い人のお雪も素敵だ。彼女が遠慮がちに土方に絡んでくる風情がいい。そしてなんと言っても「日照雨」(そばえ)である。これが要所をきっちりと締めている。

 エッセイ・評論・講演録ではこのラインナップを挙げた。
1位『二十一世紀に生きる君たちへ』
2位『この国のかたち』
3位『街道をゆく43 濃尾参州記』
4位『人間の集団について』
5位『風塵抄』
6位『土地と日本人』
7位『微光のなかの宇宙』
8位『民族の原形』
9位『ロシアについて』
10位『日本とは何かということ』

 トップはなんといっても『二十一世紀に生きる君たちへ』。これは司馬さんから子供たちへの遺言である。司馬さんの思いがつまった最後の手紙と言っていい。これをきちんと読みこんだ子供はきっと幸福な人生を全うできるだろう。そのくらいのインパクトのある評論である。
 ワシャは『二十一世紀に生きる君たちへ』は少なくとも5冊持っている。司馬遼太郎記念館発行のもの、これが2冊ある。それから、司馬さんの親友のドナルド・キーンが監訳した『対訳 二十一世紀に生きる君たちへ』(朝日出版)、巻末にこの評論の収められている『十六の話』(中央公論社)、そして『司馬遼太郎が考えたこと』(新潮社)の第14巻である。どの本で何回読み直したか不明なくらい読んでいる。そして読むたびに感銘を受ける。ただし、読んだのが子供の時ではなかったので、ワシャには間に合わなかったけどね(笑)。

 これ以外にも司馬作品は深く味わいのあるものが多い。高度成長期の品(ひん)のない経営者たちがこぞって「座右の一冊」ということで名前を出したために品(しな)が下がってしまったが、そんなことはない。そんな馬車馬みたいな連中にも理解させるくらい読みやすい作家だということで、歴史の流れ、生きるということの上澄みを知るにはうってつけの作家である。そしてそこからぐっと深堀していけば、司馬史観、日本人論、この国の形などが見えてくるに違いない。

 ワシャも地元で司馬遼太郎の読書会をやろうかしらん。