号外

 今朝の「天声人語」があまりにも空疎で、「これで金とっていいのかい!」と思ってしまったので号外ということで。

 どうやら天声人語氏、愛知県の半田市にやってきたらしい。矢勝川の300万本の彼岸花から書き出している。「彼岸花の燃え立つ秋である」臭い書き出したねぇ。最初は、中日新聞のコラムかと思ってしまいましたぞ。矢勝川、彼岸花とくれば、次は「ごんぎつね」に決まっている。「ごんぎつね」とくれば「火縄銃」の筒先からの煙。ネタが想像の範囲を超えない(泣)。
半ばに、新美南吉記念館の学芸員の話を引いて、南吉の29年の生涯を苦難に満ちたものと断定しながら、彼岸花の咲く堤を歩いたんだとさ。
 浅い。築地の本社を飛び出して、わざわざ知多半島の半田まで来て、これだけの内容しか吸収できなかったのかい。交通費を使って遠くまでやってきたのは、この「天声人語」を書くための出張ですやろ。もうちょっと気張って踏み込んだ取材をしておくれやす。
 そもそも南吉の生涯は苦難の連続、苦難に満ちた29年間ではなかった。彼が安城高等女学校に赴任して教鞭をとっていた4年間は、彼にとって幸福な時間だった。当時の写真が幾葉も残っているが、彼の表情は充実し、楽しげで、活き活きとしている。かれはたくさんの恋をしたし、かわいい女子生徒に囲まれて、ときには講堂にあるジェイベッカーのピアノでショパンなんかを聴きながら、思索に耽ったものである。
 天声人語氏、ネガティブな南吉像ばかりを披歴するが、それは一面的な視点でしかない。ポジティブな南吉は女学校に確かにいたし、多くの教え子がそんな南吉を記憶に留めている。
 1カ所、取材をしただけでもっともらしいことを全国紙の1面で書くなよ。